恋愛も、仕事も、友達づきあいも完璧で理想の男-第1話 10:20pm

Posted by 美海 * mimi on 01.2014 DRAMA
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ジャケットを腕に掛け、壁際に移動しスーツケースの上に座ってもう一度電話を掛けた。


「あぁ、今、見えた、そこ・・・」


リムジンバスやタクシーの公共の乗り物に混じって車が止められない為か、歩いて向うからやって来た、懐かしい顔。
自分の昔も蘇る、いつも一緒に行動していた友達。

今となってもまだ続くほど、俺たちは気が合っていた。

同じ会社になるなんて思いも寄らない今を・・・ 留学する前に誰が予測できただろうか。
同じ学部に籍を置いていた1年間。同じ夢を抱き同じ時期を過ごしたのだから、仕事になる職種は同じだろうとは思っていたけれど、違う国で勉強した事は必ずしも同じ道を辿っていくとは限らない。

でも、俺たちは・・・

同じ夢を抱いた同士。

今の俺たちは、昔のままの関係にもどる・・・同僚で同じ会社。
辿ってきた道は違ったけれど、出遭った道の交差点。同時に其処に辿りついた俺たちは、これから・・・ 自分達が創り上げるものを、共に共感しあい、共に反発しあい、


良い面と悪い面が、いつも同時に存在する・・・関係に

安心と不安が同時に起こる・・・関係に

そして、他人には無関心と云う・・・ 
見て見ぬフリをする・・・ 事は無い程の絆がある・・・俺達の関係に



「 お待たせ。 」


手を上げて走りよって、肩をパシッと叩かれた。
無意識に差し出された右手に、無意識に右手で握った・・・握手。

「 ありがとう。 」


この言葉の意味は・・・こころからの気持ちだった。

迎えに来てくれて、有難う、との感謝を込めて。 
彼の人生の中に俺を思い出として置いてくれて、有難う、との感謝を込めて。


「 待ってないよ・・・」


微笑んで肩を軽くパンチした。スーツケースから立ち上がってジャケットに袖を通しながら、今思った事を口に出そうとしたが・・・


「 なんだよ。どっちだよ。 」


「 えっ。やっぱ、感づいた? 」


「 当たり前だろ、何年、友達。続けてんだよ・・・」


ふっと柔らかい笑みを向けられて、自然とこちらも微笑んでしまう。スーツケースを引きずりながら横のコイツにもう一度・・・今度は下から見上げる様に頬を上げて笑いかけた。


「 俺もお前も・・・」

「 人生の分岐点でなんて、待って無かったよ。 」
「 人生の分岐点でなんて、待って無かった・・・ だろ?」


二人で声が思わず揃ってしまうほど、俺たちは気の合う・・・ 友達だった。


人ごみをすり抜けて向かう駐車場への道。
こうしてたくさんの人がそれぞれ、自分の目的を持って目的地に向かう先を、ただ・・・見詰めて歩いていく時間の中で・・・

人生にも・・・

他人には無関心で、見て見ぬフリをする事は、時々必要な事かもしれない。

横にいるコイツ。大学時代はタバコを吸っていたのに、横を通り過ぎた喫煙BOX。
何も気にせず通り過ぎた、ドアの隙間から漂う煙と匂い・・・
そして、横に並んでいて服からも匂わない、タバコの匂い。

肘で突付いて、タバコは?と聞こうと思ったけれど、自分の意思で止めたヤツに促す程・・・
野暮じゃないし。

見て見ぬフリをして通り過ぎて向かって行った。 



車についてトランクを開けてもらったが、ジャケットが邪魔だったと思い出し、後部座席のドアを開けながらジャケットを脱いでポンと投げた。
それと同時に、ドスン。と音がし車体が震えたので、えっ!?と思って、ジャケットを二度見したら背後からの声。

もうすでにトランクの中にスーツケースを入れてくれていた。


「 なんだよ、有難う。だろ 」


基本だぞ~基本。日本の社会に挨拶は~。と言われるも、それは全世界共通だよ。と言い返す。
横に座って思い出す。コイツの大学時代の運転・・・


「 大丈夫? 俺が運転しようか? 」


「 はぁ~っ!? 今まで左ハンドルのヤツに、任せられるかぁ?」


ま、乗れ乗れ。と背中を押され、ドアを片手で開けられた。コイツの背中を押す手が昔と違って優しく、女の子を何度も乗せていると思わせた。

ヤッパリ・・・そう思ったのは、車の中の香りが違う。
タバコの匂いも もちろんしない。でも甘いベリーの香りが漂う車内。


「 ふ~ん。これ好み? 」


「 何が? 」


「 香りだよ、甘すぎないか?」


「 あぁ、そう・・・女の子ってさ~、甘いぐらいが丁度いいだろ? 」


ふっ、まぁね・・・と言い切らないうちに、だよな~。やっぱお前なら分かると思ってさ。と返される。
何度も相談された昔の仲間は、変わってないな。と思いつつ・・・

・・・横目に飛び交う飛行機を見て、山の木々が生い茂り、緑豊かな首都郊外。
道路わきにコンクリートの隙間からも生える雑草に、電信柱なんて懐かしいものにも、巻きつく蔦、苔生して緑になった道路脇も、何もかもが懐かしかった。

湿った空気に、久々に感じた首の周りからの、じわっと出てくる汗も・・・

懐かしいな。と思って話しながら車窓からみえる・・・密集してきた住宅地を見ていた。




_______ ・・・カチャ ・・・


目の前に置いてあったドリンクホルダーから・・・

白と黒のどちらがいいか聞かれても無いけれど、勝手に開けた缶コーヒー。

もちろん、俺の好きなほうもコイツの好きなほうも、好みは昔から変わらない・・・




東京タワーの見えてきた橋の上・・・

懐かしさが募るこの光景に、自分が住んでいたニューヨークの景色も重なる。

背の高いビルの立ち並ぶ、そして傍に緑溢れる公園もあって、どんよりと曇っているこの天気も、まったく景色は似ていないけれど雰囲気が同じ光景。


目の前の渋滞も・・・そのもの。


暗くなりかけてゆく空の色も、どんよりと・・・
そして、スモッグのかかる濁った空気が、太陽の夕日をさえぎって眩しくない夕焼け。
来た方向を振り返ると、東の空には何も浮んでいなかった。

きっと郊外に行けば見れるであろう一番星も、この都会の空に見えないのは・・・
ニューヨークでも同じことだった。そして目の前に広がる・・・

星空の代わりの様に、輝き出すビルの、街のネオンの、渋滞の先に見える車のテールライトが、濁り淀んだ空気に揺られて、瞬いているように見える・・・


都会の夜。

地上の星空と、パイロットは言う。


地上の星空と天の星空の区別が付かなくなる時に、事故を起こす例もあるほど、パイロットが嫌う景色。

その記事を書いた事もあって、俺が乗る飛行機は必ず、明るいうちに到着する早い便。

でも・・・

早い便にしたかった理由・・・それは・・・




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Love Letter from RT and CH

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