To be my Grace - XVI

Posted by 美海 * mimi on 13.2014 To be my Grace
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監督を交えて立ち回りをしていた。


ふっと思いついた事があった、さっき。
さて、貴島にアドリブで仕掛けるか。そう思っていたので、監督に伝えた。


「 ワイヤー準備の時、血のりを3つ下さい。 」


ん?どうして? 貴島君と敦賀君、胸に一つずつの予定だけど・・・あぁ、いいよいいよ
それじゃぁ、大きさは?と聞いてくれたので、手の平に小さい隠せるのを一つずつと胸に一つ。
と伝えて、貴島には伝えようとすると・・・


「 うん。いいよ。聞かない。アドリブのまま来て。 」


両手で、掛かって来いよ。みたいに・・・そう言ってくれる貴島。監督も・・・


「 じゃぁ、敦賀君にもちろん、任せるよ。 」


ポンと肩を叩かれて、じゃ、リハ・・・じゃない本番かもしれないから、カメラ回して~と言いながら自分の席に戻る監督。その監督を見て貴島が・・・


「 へ~、もう一週間で監督に信頼、得てるんだ。 」


とは言ってくれるのだけれど、Tragic Markerの時にさ・・・なんて絶対に言えない。
なので・・・まぁ適当に、うん、まぁね。と言って、他の俳優さん達に宜しくお願いしますと声を掛け言葉を濁した。





________ 処は騎兵隊長の邸宅。

パルティア遠征の戦いについての作戦会議で、食事をしながらと成っていた。

騎兵隊長とブルータスと楽しく晩餐をしていると、何のはずみか・・・


「 どういう死に方を望むか? 」


と云う話題に成っていた。
二人とも勇者ゆえ、戦場で美しく散る様に華々しい最後を望むと笑い、ゴブレットを持ち上げて飲み干した。

シーザーは、自分のゴブレットを取り上げて飲み干すと、口を開いた。


「 突然・・・が、いいか・・・ 」


蜀台の灯は ゆらゆら揺れ、シルバーのゴブレットにその温かい橙色の炎を写し燃えている様に光っている。

そのゴブレットに葡萄酒を執事に注がれて、すっと目の前に出された。
そのゴブレットを手に取った時、はっと気付いた。

二人とも自分のゴブレットを飲み干していたはずなのに、この邸の主、騎兵隊長のゴブレットには葡萄酒を注がないままだと。

ゴブレットをテーブルの上に置き直し、すっとブルータスの目の前に差し出して言った。


「 ・・・そう、死は思いがけず、突然やって来るのが好ましい。 」


ブルータスの顔をじっと見詰め続け、フーと、深くゆっくり息を吐き出した。

ブルータスは、もう一度シーザーの前にそのゴブレットを差し出す。


「 これを、我らの誓いの杯に・・・」


シーザの瞳の中に燃える様に揺れる蜀台の灯。その瞳を見続けている。


「 ・・・どうぞ。ブルータス先に・・・」


そう言い微笑んだまま手元をお互いに見る事無く、瞳をお互い見合っていた。

ブルータスはそのゴブレットを取り上げると、シーザーの顔 目掛けて葡萄酒を掛けた。

とっさに横を向いて正面を避けたものの、頬に掛かり滴り落ちる葡萄酒が唇に付いた時、舌で自分の唇を舐めた。

プッっと吐き出し、手の甲で頬を滴り落ちる葡萄酒を拭った。


「 やはり・・・ブルータス。・・・お前もか・・・ 」


二人は同時に立ち上がる・・・・__________






______ 「 カット。 」


いいよ、二人とも。
じゃぁ、血のりとワイヤーお願いね~。


はーい
うぃーす・・・



( さーて、ここからだな。 )

ワイヤーを背中に着けられながら、美術さんに衣装の中に血のりを二人とも入れてもらっていた。

監督が横で、じゃぁ敦賀君。アドリブでいいけど・・・


「 ワイヤーの方向は変えないよ。いい? 」


「 ハイ。もちろん大丈夫です。 」


それじゃぁ、敦賀君は・・・上にひゅっとで、貴島君は・・・後ろにひゅっとね。
貴島君は真後ろにエア・マットレスがあるから、心置きなく倒れる様に引っ張るから。
じゃ、よろしく~と言って去る監督を横目に、手の平に小さい血のりを一つずつ付けてもらっていた。




______ 「 じゃぁ、いい?・・・シーン後半。よーい・・・」


カチッ。





二人が同時に立ち上がり、ブルータスがシーザーの腰から短剣を抜き取ると、その胸目掛けて振り翳した。


________ ドン。


シーザーはその短剣を手の平で受け取ると、手の平からは血が滲み出してくる。


「 ハッ・・・」


シーザーはブルータスを見下して笑った。

あっと驚いたブル-タスは手の平を見ていた。そして、ゆっくりとシーザーの顔を見下す様に顎を上げその・・・上げた顔の表情・・・

冷たい笑みをシーザーに向けながら、首をゆっくり傾げた。
そして、静かに言い出す・・・


「 死は・・・なぁ、シーザー・・・」


カッと翠色の目を見開いて、視線をシーザーと向け合い叫けぶ・・・


「 思いがけず突然やって来るのが好ましいと・・・言ったよな!! 」


力と自分の体重を込めて、シーザーの手の平を短剣が通り抜け胸を突き刺した。

それでも尚、手の平に短剣の根元が食い込むほどギリギリと押し付けている。

シーザーは短剣を受けた手に力を込めて、自分の胸から溢れる血が吹き出るのも構わず、押し続けられている力に勝る様に刃の刺さっている手の平で押し返し、胸から短剣をゆっくりと引き抜きながら、反対の手でブルータスの短剣を持つ手首を掴んだ。

でもブルータスは短剣を握った手を離そうとしなかった。


そのままシーザーは刃の刺さった手の平を自ら引き、鞘と手の平の間に出来た隙間・・・その刃を反対の手で握り締め、刺さった手の平を引き抜いた。その刃を握った手にも血が滲み出してくる。

驚いたブルータスが短剣を持つ手が緩んだ瞬間・・・

シーザーはその短剣をブルータスの胸に向って投げ差した。


ピシッとブルータスの返り血が、葡萄酒を掛けられた横顔に飛んできて思わず目を瞑った。

直ぐに目を開けると、短剣はブルータスの胸の奥までグサッと刺さっていて、彼の表情は驚いたまま・・・

自分の胸に刺さった短剣を、ゆっくりと下を向き見届けている。

シーザーも下を向いていて、自分の胸から溢れ噴出す血と、自分の両手からも滲む血を見詰め・・・


「 ハ・・・ 」


低い声で笑い、その両手を・・・

目を開いたまま止まっているブルータスの頬に、ピタピタと軽く叩き付け顔を自分にぐいっと向けて、同じ色の瞳を見詰め・・・

ニヤッと笑った。


「 俺の心。この我が血の溢れる場所に居る・・・」


そしてその両手で、ブルータスの頬に自らの血を撫でつけながら顎を通り、首を絞めた。


「 俺のクレオパトラに恋をした、お前の最後を・・見届け・・た・かっ・・・た・・・」


そう言い残しながら力の抜けていくシーザーは、見詰め合っていた目がゆっくりと閉じられて・・・

首を絞めていた手も緩む瞬間、ブルータスを残った力の限り押し・・・

・・・シーザーは、ひゅっと天に召す様に消えた。



シーザーに押されたブルータスは後ろに飛びながら、目を開いたままシーザーを見詰め続け・・・


「 俺の此処にも・・彼女が居た・・ん・・だよ・・・」


言葉は消えながらその息を止め、消えた。



後に残された騎兵隊長は、わなわなと震えながら倒れたゴブレットに手を伸ばすと
橙の炎が燃え盛る蜀台にその手が当たり、蜀台は倒れ・・・

その橙の炎は、毒の入った葡萄酒に瞬時に燃え移り・・・


シーザーとブル-タスと、二人ともが同じ色の瞳。

葡萄酒に燃え移った炎は、その二人の瞳の翠色に変わり・・・


騎兵隊長の服に燃え移り袖からじっくり焼かれ、袖から自分の方に向かい燃え上がってくる炎を見詰めていた瞬間、ファっと翠の炎が一瞬にして大きく広がり彼の身を包んだら、炎の中にその姿は消えた。






_____ 「 カッ !」



カットがかかり、ぶらーっと上から釣り下げられたまま見ていた俺。

上からだとスタジオ全体が良く見えた。ちらっと隅の休憩場所に居るキョーコを見ると、
身動きもせず・・・ぐーっとよく寝ていた。

社さんが掛けたのだろう、俺の大きいバスローブが掛けられていた。


( よかった・・・)

あまり、妊婦さんに自分・・・まぁクレオパトラには夫だけど、実際プライベートには婚約者が殺されるシーンなんて、嘘物とは分っても血まみれなんて見せたくなかった。

思わず・・・ Good Job ! キョーコ、よくできました。なんて心で褒めていた。



キュイーンと下ろされていると、貴島はエア・マットレスの上で胸に付いているナイフを取りながらむくっと起き上がった。


「 いい、いい。・・・良かった。二人とも~! 」


監督が駆け寄って来て、OKですか?と血まみれの手で親指を立てると、モニターチェック~してっしてっ。と手招きで呼ばれ、CG合成がもう出来ているらしい一つのサンプル合成画像のモニターを、これっこれ~!と見せてくれた。

音楽も入れたから~!といつも敬語でご丁寧な監督が・・・歓喜あふれてくれて、


「 どうもありがとうございます。 」
「 ど~もありがとうございます。 」


と思わず・・・貴島と声が揃って言っていた。

見て見て~!と嬉々溢れる監督に促されてみた画像は、正面の3つだけのあまり動かない画像。
風景も嵌っていて、引きと寄りの二種類が、場面によって手だけのアップから顔に移ったり・・・


「 そう、ここ。 」


監督が止めたのは、手の平で受け取って、貴島が本当に驚いた顔。


「 貴島君の本当に驚いた顔も、こちらのカメラでしっかり綺麗に納まっているし。 」


それとね・・・
こうしたいかな、と思ってさ・・・

そう言いながらマウスを取って207メインカメラの2点撮り、引きと寄りの二つ。
それぞれ見ると引いて二人が映っているものと、貴島のナイフが刺さったアップのもの。

_____ それでね・・・

CG技師が次に映したのは、返り血を頬に浴びた俺のアップと引きの2つ。

_____ ゆっくりフェードを50%ずつ、インとアウトと同じ物を別にして行くとね・・・

その作業をしながら、1秒だけ戻して再生した、それ・・・



「 うわっ! 」
「 おっと! 」


二人で声を上げてモニターを見ながら、顔をとっさに避けていた。

ブルータスの胸に刺さったナイフの返り血が、画面から出てこちらに向って飛んで来て、
顔を避けたらもうシーザーの顔に、返り血が付いていた。


「 ぷっ! 」

貴島が笑う・・・


「 だって~、敦賀君。さっき演技中は、うわって声を上げなかったじゃんか。 」


いいの、演技中は成り切っているから。なんて・・・言い訳しながら、お互い避けなくてもいい程、すでに血まみれ&ワインまみれ。

貴島にいたっては、頬をペチペチしたし、両手を広げながらゆっくりと頬から首まで満遍なく血を塗りたくってやったので、相当な血まみれ。

俺もベットリ、掛けられたワイン・・・に見立てたグレープジュースが、顔から胸にかけてベトベトしていた。


衣装さんと大道具さんが俺達に寄って来て、衣装を脱ぎながらワイヤーの装備も外してもらうと、渡されたバスローブに袖を通しながら監督の話を聞いていた。


後は、敦賀君の姿を本当にひゅっと消して・・・
貴島君もひゅっと消して・・・

ブツクサ言いながら、マウスを動かしてフェードしつつ・・・4秒戻して再生すると、
本当に上に上がりながら、ひゅっと姿が消えた。その2秒後、貴島も後ろにひゅっと消えた。


「 オッケーおっけ~、後は炎の色を調整かな・・・じゃ、京子さん呼んで・・・」


( ん?あれ? )

自分が着ているバスローブを思わず見てしまう。
やっぱり自分のバスローブ。

さっき寝ているキョーコに掛けられてたよな。と思いながら、スタッフが京子を呼びに休憩場所に駆け寄るのを目で追っていた。

キョーコは既に起きていて立ち上がり、メイクも衣装も直されていた。



( かんばれ~・・・それが終わったら、腕の中でどうぞ、思う存分寝てください。 )


心の中で、寝起き顔を直されている彼女を見ながら・・・
そのメイクさんと衣装さんには、妊娠していることを伝えたらしいと安心。

監督の言い訳。


"本物のクレオパトラと同じ顔料で宜しく。"


そんな注文を出されたメイクアーティストは、駆けずり回って天然石から取れた顔料を使って直してくれている。その横の衣装さんとは、コンビを組まされている。

だからメイクの匂いにも安心して、その光景を見ていた。







Love Letter from RT and CH