恋愛も、仕事も、友達付き合いも完璧で理想の男-第5話 10:20pm

Posted by 美海 * mimi on 26.2014 DRAMA

_________ 10:20 PM




電話を切ってエレベーターを待っていた。



________ カチャ・・・


振っていた缶コーヒーを開けて飲んでいると、エレベーターが来た。

エレベーターの中で・・・

アイツどうせメモに気付くだろ。とは思っている事。
俺が居なくても、勝手に食べるのは百も承知。書類の事は、任せたぞ。と・・・

ご褒美を先にあげたのだからやれよな。と・・・

そんな事を思いながらエレベーターを降りてロビーに向うと、電話の相手がそこに居る。


ここの受付嬢は、語学堪能。特に英語は全員しゃべれる・・・ハーフの子達。
殆んどが英語、日本語、その他のトリリンガル以上の子達。

思ったとおり、今話していた電話の相手は、受付譲と着ている服について話していた。

その俺を呼んだこの人は・・・ 俺の元、同僚。

ニューヨークから来た、この会社とも関係のある出版社の人だった。


_____ Here he is …

受付嬢に後ろを促されて、振り返ったその元同僚。
ぱぁっと顔を明るく微笑ませ、Thanks a lot . . . と、受付嬢に言いつつも、その言葉は俺の方に向きながら、大きな歩でコツコツとヒールの音を大理石張りのロビーの床に響かせて、近づいてきた。


「 Hi ya. Long time no see. 」

“ 久しぶり。”  微笑んでその・・・元同僚に手を挙げた。

_____ Why you left from New York with nothing to say to me, I didn’t know anything since I came back from business trip from Europe. I ask my…and your boss about you but he just said you left to Tokyo for your business… An’ then..Let me tell you after you left . . . . .

“ 私がヨーロッパに出張に行っている間、どうして何も言わずにニューヨークを経ったの?自分達のボスにきいても、東京に移ったとしか教えてくれないし、それでね・・・貴方が居なくなってから・・・”


関を切った様に、一気にしゃべり出した元同僚。


「 Oh ya ? Do I need to tell you about my business?
Is it . . .DO. . I . . HAVE. . TO . .GET and or NEED … under your permit ?」

“ ん~、そう? 仕事関係だしそれを伝えないといけなかった?それは、ど・う・し・て・も?
君の許しが必要なわけ?”


いくら元同僚といえど、アメリカでは引き抜き社会。
勝手に次の日から・・・いや、その日の午後からなんて場合もあるほど・・・

引き抜かれて、一度サインをしたらその場で直ぐに自分で勝手に移動してしまう事も常。

メジャーリーガーだって、監督やオーナー同士がサインをして選手がその年俸に賛成したら、試合中に5回まではこっちのチーム。6回からはこっちのチーム。なんてこともあるほど。

別に自分が引き抜かれてこちらに移動したとしても、別に仕事に会社に、会社側がサインをしてくれたのだから、同僚や部下や直々の上司は、関係ないのである。

・・・そんな事は知っているだろ。とは、思っていても言えないでいた。


極めて落ち着いたトーンで、話していたつもりでいた。なにせ、会社のロビーである。

彼女のヒールのコツコツと歩く音が響くほど、周りはしーんとしていた。
この時間・・・お客の少ない退社までの1,2時間前の時間帯。

それに、外から帰ってくる者も、まだ、か、もう、の時間帯だった。

ヒステリックに成りがちな、アメリカ人女性。なにがそんなに頭に血を上らせるのか・・・
イマイチ、そこだけは理解できない日本人の俺。


そこに座っているハーフの子達は、どちらの気持ちも分かるのだろうか?

そんな事は、どうでもいいが・・・その子達は、興味深げにこちらを見ている。


_____ But . . .

そう言い掛けた元同僚に、シー・・・っと言って、目の前に人差し指を立てて見せた。
その指で彼女の唇を押さえて、首を傾げながら・・・

「 You should come with me. ‘Cause you came here for business right ? 」

と言いつつ、タブレットを小脇に抱えた唇を押さえていない方の手に持ったままのコーヒーの空き缶を見えないところで、ぺキッと軽く音を立て握っていた。


「 ふふ。 解かればよろしい。 」

そう微笑んで指を唇から離し、落ち着いた彼女を連れてロビーの先、エレベーターの方に歩きながら、ぽいっと缶を通りすがりのゴミ箱に捨てた。


本当は外で商用を済ませようと思っていたのだけれど、なんとなく今の会話に引っ掛かっていたので、誰か他の人を交えないと個人的な感情が彼女から仕事以外にありそうだと思えていた。

エレベーターの前に来ると、自分が降りてきたままに成っていた。

ドアが直ぐにすっと開いて、エレベーターをドアを押さえて どうぞ。と促せば、コツコツとヒールの音を何歩か響かせ、それに続いて乗った。

自分の部署の階のボタンを押すと、ドアが閉まった。

二人きりのエレベーターの中。

ふ~っ・・・と横目で腕を組んで斜め下から見上げられる。


「 What ? What wrong with you ? Did I do something like… it ‘s mean… Is anything happened between me and you ? 」

“ 何?どうした?お互いの間には何も無いし、って事。だけど?・・・”


_____ Mmm… Nothing.

“ん~、まぁそうね。”

そう落ち着いて話し始めた彼女に安心する。

そして自分の部署の階にエレベーターが着いて、会議室に行こうとするとシャツの袖を捲くって書類に目を通してくれている同僚の姿。

お客を連れて帰ってきたのを見て、すっと立って傍に近寄って来た。

「 He is my co-worker. She is my ex co-worker. 」

彼女と同僚を紹介すると、How do you do… it is nice to meet you と紹介しあい
ぐるっと部署を見回すと、ダナ・キャランの香る彼女が見当たらない。

アメリカチームと一緒に、自分の元勤めていた雑誌社本社からのこちらで行う日本版の監修にわざわざ来てくれた彼女を紹介しようと思っていた。


( メールでいいのに・・・)


そうも思っていたけれど、きっと口実。

俺に逢いに来たのだろうと、思う事は・・・先ほどのロビーでの事もその前の電話でも・・・

“ 今もう来たから。” そんな事を言われて驚かないはずがなかった。


「 今、会議室でレイアウトの話合いしてるよ。 」

自分が何を言いたいのか解かるついでに・・・肘でこつっと脇をつつかれて気付く。

・・・部署に誰が居ないのか。


なるほど・・・
イタリアの子達が居ない。フェラガモの彼は出張だった。


「 あぁ、トリュフ・・・ご馳走様。 」

その言葉に、目の前の元同僚は日本語が分からないので、こそっと・・・

「 ふ~ん。これから・・頂くんだろ? 」

そう耳打ちしたら、んじゃ、会議室で一緒にどう? と、頭と親指をそちらに向けていた。
ん~、どうにも時間稼ぎをしたいのだな。とは、コイツの事はよく分かってしまう自分だった。


________ コン・コン・コン・・・


会議室をノックすると、は~い。と声が聞こえた。


________ ガチャ


ドアが開くとダナ・キャランの仄かな香りが、ドアをふわっと開く風と共に香った。


「 ごめんね、会議中。 」

一言そう言った。けれど、自分に向けられた視線の直後 彼女の視線は自分ではなく、後ろに居た人物に向けられていた。


「 あぁ、こちら。もしかしたら、知ってるかな・・・?」

手の平を上に向けながら後ろを振り向き、自分の元同僚の姿が見える様に一歩下がった。


自分の元同僚は、彼女の事を知らないだろうな・・・。
そう思うのは、同僚は仕事に関しては、うるさいほど拘りがあるので、ニューヨークではかなり有名な業界きっての編集長であった。

それに・・・

仕事に拘りがあるからこその、かなり人選に関して厳しい人物。

・・・なのでも、有名だった。


目の前の固まったダナ・キャランの香りの彼女の表情に、彼女の方は知っていると思われる。

「 それじゃぁ、ちょっと一緒に会議いい? 」

微笑んで自分の部下である会議室にいた子達 全員に断ると、

後ろに居る自分の元同僚の耳元に顔を寄せて、英語で断った。


「 ・・・、・・・。・・・did you gotta it ? 」


_____ ふふっ。

くすぐったかったのかどうか、定かではない。でも、自分の言った言葉に反応していると見えた。

その横に立っていた今の同僚は、元同僚の細身の背中を越えて腕を伸ばし、俺の肩をパシッと叩いた。

ふふっと微笑んだ元同僚。
その表情は女の人そのものだったけれど、直ぐにキッとビシッと成って一歩前に出た。

それに合わせてドアの向こう側の部下たちはサッと下がって、どうぞ。ようこそ。と椅子を勧めた。 ダナ・キャランの香りの彼女は、ハッという顔を戻して…がんばって営業スマイルに戻していた。


「 それじゃぁ、いいかな? 」

そう言って始めた会議。
椅子を引いて腕にかけていたジャケットを背もたれに掛けて座り、気が付いて・・・
イタリアチームのプラダの子は補佐なので、お茶かコーヒーを・・・と、促して退室させた。


「 How do you think about…」

コレについてどう思うか・・・


「 Because this is it, …」

これは、何故なら・・・


「 the differences between Tokyo and New York. . . . .」

東京とニューヨーク、二国間の違いがあるので・・・


会議をしていく中で、どうして元同僚がこちらに出向いたのかが解かりつつあった。

世界中で、それぞれの国の言葉と中身の編集をされて同時に発売される雑誌。
一番大本の本社から、出向いたのには訳がある様だった。

それは、日本の雑誌に関して・・・

基本的に日本の雑誌には、モデルを起用していなく取材させてもらった写真の掲載で本誌の風格を殺がない為にしていた今までだった。
モデルが日本人に成る事を心配していたのもあり、かといって日本での流行り物を外国人モデルにしては、どうかと言われるとどうも似合わない気がする。

そのため、彼女は日本での雑誌にモデルを起用するかどうか・・・

その検討を話し合いたいと云う事で、もしそうなら、改めて自分が出向きモデルのオーディションもする。と、云う事だった。


・・・この、鬼編集長の見る目は、実は間違いない。

そう思うのは、ニューヨークにて自分が採用されて1年後、モデルとしても働いてみないかと言われてからは・・・

一番初めに載った写真が、日本人でありながらのオリエンタルさと体格ですぐにトップモデルを輩出する事務所からの問い合わせやオファーが自分に殺到した事もあった。

彼女が見て、感じて・・・

直感とタイミングを今までに一度も逃した事は無いと思った事。

その時の雑誌の特集には、自分が一番大きく載せられるほど必要な雰囲気だったのだと。

でも自分はモデルではなく、編集がしたかったので転職はしなかった。
けれど、この雑誌のモデル契約だけは、会社にさせられていたのである。

それに、その後の事だった。


他のモデルはモデル事務所から雇用している本職だった。
その為、自分が感じた事があった。

編集部にこぞって人事異動もしくは外部、新しい新規の募集を掛けても居ないのに仕事を求めて履歴書を持ってくる事が多かった。

自分の元同僚は、自分が創る雑誌に掛けてのプライドを高く掲げて此処まで来た。
その功績が認められる様に、彼女自身も編集長まで上り詰めた人であった。

間違いのない観察力と想像力で・・・
他の出版社からも引き抜きのオファーがあったに違いない。でも、彼女にとっては・・・


きっと、自分と離れるのが嫌だった様だった。

彼女が上に上るタイミングを掴んだのは自分との特集。それから自分と二人三脚でやってきて、それがお互いにそれぞれ、自分の自信と成った事を・・・

自分も彼女も感じていた。


その為・・・

自分のモデルとしての人気を彼女が誇らしく思ってくれる一方、

この元同僚は、俺目当てに会社に入ろうとする子達を・・・
一目で見抜き、もしキャリアがあっても俺に興味を向けている以上、仕事への情熱ではないと判断して、面接も1分以内に全て断っていた。

そんな観察力のある元同僚。

観察力と言えば、こちらでの今の同僚も同じだけある。

どうだか分かんないけど、コイツは自分から興味のある子には・・・え~っと・・・微妙である。

ちらっと横のコイツを見れば、イロイロな関係のある子だろうがなんだろうが仕事関係の話し合いには真面目に考えて容赦なくストップをかけ、考えさせるところは待ってあげている。

それと元同僚と違うのは、無碍に叩き切る様な言い方はしない、日本人らしい・・・
グレーな雰囲気で上手く纏めてくれる事。

ニューヨークに居た時のこちらの同僚は・・・Anyway, Nothing I can do.

自分にすることはコレと言って無い。と、ビシッと切る様に、はっきり断る事だった。

きっと、今自分の部下である彼女も・・・この元同僚に厳しく突き放されただろうと思っていた。


そんな様子を目の端に捉えながら、本社の方が出してきた注文通りに話を進め、妥協できない日本人の感性の部分はグレーな人が一刀両断できない・・・ので、ビシッと切る人には切ってあげねば分かってもらえないでズルズルするだけなので、はっきり自分が断ったりと会議は短く濃厚に終わりそうだった・・・

・・・部下の彼女は会議中に、顔を強張らせていたものの

自分の元同僚と、自分のやり取りと・・・

今自分の同僚であるコイツ・・・

仕事のセンスも能力も学ぶ事が多かったのか、真剣に聞き入って、はっきりと質問する様に成るまでに会議に没頭していた。


ダナ・キャランの彼女が、一度反論した時・・・

自分の横にいた元同僚は、さっき自分がした様に、首を傾けて耳元に唇をよせて俺に囁いた。

_____ Well I’m in curious with her…

“ふ~ん、彼女。いいんじゃない?” そう言った元同僚は、俺の耳元に顔を寄せたまま彼女を横目で見ていた。

「 You think so? For what ? 」

“ そう思う? じゃ、何に?”

テーブルに肘をついて、元同僚の顔を覗きながら頬杖をついて、そう返した。


_____ ん~、センスと意欲かしら?・・・昔の貴方の様ね。

見詰められたまま微笑んでそう言った元同僚。

きっと自分だけが知っている・・・
自分の今部下の彼女はニューヨークに居た時、俺と逢いたくて、それに一緒の仕事に携わりたかったと言ってくれた。

だから、この元同僚に即刻、叩き切られる様に落とされたのだろうけど・・・

この会社に入ってから、俺が彼女から聞いたのは・・・

転勤でもいい、ニューヨークで働きたい。・・・その仕事への意欲であった事。


思わずフッと笑ってしまう。

なにせ、彼女が落とされた時に元同僚は彼女に対して今思った

センスと意欲。・・・これがある事を見抜けなかったのだから。



_____ モデルに関しては・・・

貴方は、ニューヨークでの契約が終わっていないのだから、こちらですることは出来ないわよ。
うちの会社の契約は、他では一切出ないという契約書にサインしたわよね?

・・・と、云う事で・・・

モデルを起用する際は、私がまた出向くから。
それまで、昔の貴方のような・・・


元同僚は ちらっと彼女を横目で見て、もう一度自分に微笑んだ。


_____ あの子を育てたらいいんじゃないの?

あぁ、彼女にモデルは無理ね。それはモデルである貴方も解かるわよね。


「 まぁね・・・」

自分に自信があるわけではないけれど、元同僚が言いたい事はよくわかる。
モデルに関して・・・ 

スタイルかと言ったらそうではない。
それに関しての直感が、俺も元同僚も働かなかったからである。


でも・・・

彼女のセンスの良さやTPOに拘りがある事は、デートに行ってよく解かった土曜日だった。

二人でウィンドーショッピングをしていて、こんな職種の俺達。
見るもの全てが仕事の様だった。

始めは良かったのだけれど・・・

昼食を食べた後、少しずつお互いがそれぞれ感じる事を言い合える様に成った。
でも、部下と上司。そんな言葉同士になってしまっているうちに、アメリカでの癖・・・

お互いに引かない、自分の意見の尊重をしだしてしまっていた。

きっと今の同僚が彼女の相手だったら、グレーな感じに上手く丸めて・・・
上手に転がすんだろうな・・・。とは、さっきおやつの時間に、マシュマロ入りのカフェオレを手に取った時に思っていたことだった。



Love Letter from RT and CH