恋愛も、仕事も、友達付き合いも完璧で理想の男-第5話 10:00pm

Posted by 美海 * mimi on 26.2014 DRAMA


Starring _____________


敦賀蓮

貴島秀人





__________ プ・プーッ ・・・・



車の通りの多い交差点に居た。
信号が変る度、たくさんの人が行きかう横断歩道を見ながら、東京もニューヨークも変らないな・・と思っている。

週末・・・もちろん、仕事の人も居るのだろうけれど、その殆んどは時間に追われる事のない休日のお昼前。

行きかう人の波は いつもよりもゆっくりしていると感じるけれど、何処の国も首都に住む人は、それでも急いでいる様に見えるのは、何故なのだろう・・・

青になった信号にまた、人の波が動き始まる。その中に、急ぎ足で駆け寄ってくる子・・・


「 こんにちは。 」

なんか変な感じだね・・・と、言い合って、会社で合う時は、おはようから始まる・・・

上司と部下の関係。


日本に帰国してから、まだ間もない初めての週末。

こんなに早く誰かと一緒に時を過ごすなんて、考えも付かなかった事。それに・・・
隣に歩き始めた彼女。いつも会社で会った時の様にダナ・キャランの仄かに香る

この香りの女の子を隣に歩かせているのと・・・

今まで見た彼女の服装の好みは、ダナ・キャランが好きなのだろうと思える、白いシャツの襟を後ろだけ立てて黒のパンツスーツが多い彼女。
日本人だからか、襟の細いシャツに、長めにシャツのボタンを開けて着ているところも彼女のセンス。ピンヒールの細いつま先のパンプスで・・・

でも今日は・・・

ニューヨークに居た頃を思い返すのには十分な程


スニーカーに、Tシャツで・・・手に持っているコットンニットのカーディガン
クラッチのメッセンジャーバッグより小さくて、ポシェットよりは大きくて・・・

肩から斜めに掛けて、すたすたと歩く彼女。


_____ いつも、早足ですよね?

そう言ったから、きっといつも会社では付いて来るのが大変なのか・・・
今日は、どこでもついて行けますよ。と言って顔を見ながら微笑んだ。

ニューヨークでの留学生活を長くしていた彼女と、学校卒業後にそのまま其処に仕事で住んでいた自分。

二人ともが・・・ニューヨークに居た時と、変らぬ服装なのだろう


「 ふふっ。 」

微笑み合って、一緒に行った言葉・・・

アン・クラインの腕時計を見ていて、ポケットから携帯を取り出して、お互いに見せ合うと・・・



「 ニューヨーク時間の残業・・・だしね。 」


感じている事は同じだったのかな・・・


そのまま、地下鉄の階段を下りて・・・・・


タタッタタッ・・・と降りる足音が、弾んでいるように聞こえるのは自分だけなのだろうか

それとも、自分の足音もそんな風に弾んでいたのだろうか _________





・ ・ ・ ・ ・


_______ Erik Satie

Six Gnossiennes II Avec Etonnement と共にどうぞ


・ ・ ・ ・* 第5話 We Essay in … アフター 5 の拘束 *・ ・ ・ ・




相変わらず・・・。

そう思うのも他でもない、3時になると必ずデスクの前に一列に並ぶ女の子たち。

書類に目を通してくださいますかぁ?ついでにですぅ~・・・なんて、言葉を残しつつ、
書類を胸に抱きかかえ、その書類と一緒に手作りのお菓子を抱いている。

片手にコーヒーの入ったカップをデスクに置いて・・・

デスクの前でいいものを、PCが邪魔ですのでぇ~。といいながら、横に並んでその顔を覗き込む。

その女の子たちの顔を見もせずに、書類だけに目を通し・・・

「 後で渡すから・・・いいね。 」

そう返していると、後ろの子が、はい次!とばかりに、同じ様にしてその横に立って行く。


( 全く・・・どっちの用事がついでなんだよ・・・)

そんな事を思いながら、仕事の手を止めて隣の同僚を見ていた。


「 なんなんだろうな・・・お前・・・」

「 ん? ・・・まぁ、ちょっと・・・」

そう言って、実は困ってる。とこっそり耳打ちしてきた。そして耳打ちしたまま動かした視線を追うと・・・そこにはPCの画面に正面から向き合ってタイプを続ける子が居る。
それに気付いてデスクを見ると、あるべきものが無いと思っていた。


「 今日は、シングルショットは・・・? 」

隣のデスクに置かれた泡々の、しかも小粒のマシュマロがたくさん浮かべられて少し蕩けているカフェオレを勝手に手に取って、ふ~ふ~しながら顔を寄せ合って話していた。

ずずっと啜る音に紛れて、あぁ、土曜日、ちょっと・・・と言いながら、タブレットをスライドしていた。タブレットを胸に抱いて、デスクの前の並んでいるカップを見詰めていた。


ブラインドの隙間から漏れる日差しの中にタブレットが見難かった様で、床を足でちょっと蹴って椅子を少しだけ動かすソイツ。
デスクに肘を掛け、持って来られた書類の山にタブレットを置いていた。

ポケットの携帯が振るえたのか音は聞こえる事無く、ポケットから取り出すと着信者の表示を確認しても知らない番号なのか・・・首を傾げながら話し始めていた。


「 もしも・・し・・ Oh Hi, How are you? ・・・」

しゃべりながら立ち上がり片手でブラインドを閉めた。
今書類の上に伏せたばかりのタブレット。写真をスライドして見ながら話していると・・・

カチャっと小さな音にそちらを見ても、電話で話し続けている。

何も言わず何も邪魔せず・・・
そのデスクの端に水のボトルと小さなエスプレッソカップを置き、頭を下げてさがって行った。

・・・その彼女を目で追う事無く、なにやらメモっている。



( ふ~ん・・・何があったんだろ?・・・)

この同僚、確かに金曜日は残業だった。そう、このダナ・キャランの香りの彼女と。
どう残業したのだろう・・・と思いながらコイツの飲まない甘~い女の子雰囲気満載のコーヒーを飲んでいると、電話で話しながら今おかれた水のペットボトルに手を伸ばし、電話を肩と耳で挟んでバキッっと蓋を開けた。

でも、蓋をバキッと捻っただけで、緩めるのかと思ったらもう一度閉め直し、デスクに置いた。

電話を耳から離して、胸に押し付けると・・・


「 ちょっと出てくる。部長に言っておいて。 」

その一言だけを残して、椅子の背もたれに掛けてあったジャケットを腕にかけ、スライドしていたタブレットを手に持って・・・

電話で話しながら、部署を出て行った。


その後姿を見ていて、廊下に出た先に見える・・・ポケットから小銭を出し自販機でコーヒーを買って、その缶を降りながら消えていった同僚を、そいつのデスクに置かれていた・・・

透明な箱にリボンの掛けられた、見るからに一粒でおいしそうなトリュフ・・・

アイツは絶対食べないだろ~な~と決め付けて箱を手に取りながら、廊下の同僚の背中に向って・・・

ごくろ~さん。と、心で言った。


箱の中身は見えているも、たった今これを貰った男が閉めたブラインド・・・

太陽が当たっていたコイツのデスク。それに、なんだかんだとフ~フ~しながら飲んでいた、熱っーいコーヒーの真横だったからか・・・

お口に蕩けるはずのトリュフは、箱の中で蕩けそうに成っていた。


ん~・・・このトリュフを置いていった彼女。

きっと、彼女の心も溶かして欲しいとかって?・・・アイツに思っているに違いないのか?

その彼女を、箱を手にしたまま視線を移したら、目線が合ってしまった。
思わず、にこっと微笑むと・・・そちらもニコッと微笑んで、手を上向きに俺の方に向けて、

どうぞ・・・。と、口パクで言って視線を直ぐにPCに移した。


( それじゃ・・・ )

そう思ってリボンを解きかけた。


_____ ポーン・・・
_____ ポーン・・・


と、小さな電子音が聞こえたので、ふと目の前のPCに目を移したら、メールが来ている。
ん?待て、二重に聞こえたような気が・・・と思い、このトリュフを渡された方の同僚のPC画面にも、メール着信が見えた。

( ん?珍しい・・・)

そう思ったのは、他でもない。

画面にパスワードを掛けずして、そのまま席を立って行ってしまったヤツ。
部下に見られても大丈夫なのだろうとは思うけれど・・・一応、スクリーンセイバー設定だけでも早めてあげようとコントロールパネルに画面を変えつつ、自分のPCの方に目を移しメールの確認をしていた。

自分に来たメールの相手・・・

今、微笑んでくれた彼女。トリュフを同僚に置いていった、パリチームの彼女。

今日はピンクのツィードチェック、お決まりのシャネルのスーツのよく似合う・・・
フワフワの巻き髪に、フワフワのスカーフを巻いて・・・
フワフワのマシュマロのよく似合う・・・
フワフワの雰囲気を漂わせたまま、PCのタイプに掛けては右に出るものは居ないほどの早打ち選手権ナンバー1の様な彼女からだった。


その、メールを見ながら・・・

箱から一粒取り出して、口に入れるとフワフワのチョコレートムースがとろっと蕩けて
思わず、にっこり。

( それじゃぁ、頂きます・・・。)

もう、トリュフは頂いたけれど、違う意味で・・・

そのメールに返信する為に、手についたチョコレートを ぺろっと舌で舐めたら、反対の手でメール送信。

直ぐにその子が俺の顔を見たので、まだ口元にあったその指を唇につけてウインクした。


_____ ポーン・・・

目の前のPCから また音が直ぐ成って、そのメールを見て・・・

その子が入れた、マシュマロ入りのカフェオレを飲み干した。


なんだか、背中が暑くなっていたけれど・・・それは、日差しのせいでは無いと・・・

振り返った窓は・・・
このトリュフを置き去りにしていった同僚が、ブラインドを閉めてくれていた。


デスクの端に置かれた、小さめのカップ。

シングルショットが冷めちゃうぞ・・・そう思いながら、一度蓋を開けて元に戻し、
置いたままの水のペットボトルを見ていた。


この一度開けて・・・元に戻したのには、何か意味があるのだろうか?・・・

そう思いながら、自分のデスクとの間に積まれた書類。
アイツがタブレットを伏せて置いていた書類に、何時の間にやらのメモ。
そういやなんか書いてたな。とその走り書きで残されたメモを見た。


“ 確認しといて。 ”

それだけだったけれど、だよな~。とは思う事。
なんで、アイツが俺との境に積んでいたのか・・・だって、俺達 同等の役職。

アイツの判子じゃなくたって、俺の判子で大丈夫だろ。って事だった。

( はいはい・・・それじゃぁ・・・)

一度立ち上がり暑かった事もあってジャケットを脱ぎ、シャツの袖を腕まくりして

ポキッ、ポキッ・・・と、片手ずつ指の関節を鳴らしながら、首を・・・

右に、ポキッ・・・

次いで、ゆっくり左に傾けてシャネルの彼女を視線に入れて・・・ふっと笑った。


そう・・・

トリュフの箱の在ったその下に、残されたこのメモ・・・


( じゃぁ・・・確認。させてもらうかな・・・)

そう思いながら、口の中でも手の中でも・・・蕩けた甘いその味を思い返して・・・

フワフワな感じだよな・・・。と、いろいろ予定を頭の中で立てながら、送られて来たメールの画面をもう一度見て、書類に目を通し始めた。

シングルショットの彼女も、その隣のプラダの子も、甘い香りの彼女も・・・
レイアウトについて写真の入った たくさんの封筒の束を抱えて、会議室に向った。

それを、見届けて・・・

今日は・・・彼女達・・・ 残業だろな・・・。


そう思いつつ、目の前の小山に積まれた書類をペラペラ捲って
ペラペラしながら・・・その手首に着けた、腕時計の時間を確認していた。

ジャケットを脱いで、シャツの袖を捲くったのには意味があった。


・・・制限時間・・・


よし、5時まで・・・



( その後も、確認させて・・・貰うよ。)




Love Letter from RT and CH