A New Day ~ ELEVEN * 白夜 光の国にて (4)

Posted by 美海 * mimi on 06.2014 A New Day

_____ どうした・・の・・・・



ガサガサ・・っと云う森の中からの音に、その言葉は掻き消されて
二人で同時に今 聞こえた音の方に目を向けていた

甘い歌声を、風が運んできて・・・

その柔らかな甘い歌声に胸がドキンと一瞬、跳ねた

川沿いからは少し離れた茂みの中から、掻き分ける様にして一人の男の子が現れた

ふぁあ~~、帰って寝よ。
今日は、早かったから・・・そんな事を言いながら、川に向かって歩いてくる男の子

あれは確か・・・


アカトキの国の尚王子・・・

彼も今日は視察で地上に出向いていたのかと、思っていた
では、あの向こう側に彼の国では何か重要な事柄が隠れているに違いないとも、思っていた

尚・・・ 
ぼそりと聞こえたキョーコの声に、なんで知っているんだ?と彼女の方に振り返った



「 ショー・・・ちゃん・・・」

あれは確か遊泳会の写真にも載っていた、アカトキの国の尚王子

でもこの妖精の国の中では、ちゃんを付けなければいけないんだった・・・と、急に思い出していた

妖精の顔を覗き込んで、この森の様な瞳を見詰めると、握っていたじんわりとしていた手をぎゅっと強く握られた



握っていた手を離さずに、そっと川辺を離れて森の中に入って行った

しっとりと濡れた少しひんやりとした感覚を体に感じて、二人で歩く森の中
ふわふわと海の中を漂う様に浮かんでいるクラゲを思い出す様に・・・

二人の頭上を、ふわふわと大きな羽で舞う一匹の蝶


「 キョーコちゃん、あれ見て。 」

指を指してその蝶を追いかけて歩き出していると、その蝶が舞い降りたのは甘い香りを放っていた赤い花の上 
風邪に乾かされて、ふわふわとした柔らかい感じの光景は、水圧の高い海の中では見られない

硬い甲羅で水圧から自分の身を守る、海の中の様子とは違うこの光景・・・


「 あれは・・・? 妖精の貴方のお供? 」

大きな羽をふわりと、香りを放つ花の上に休ませて佇む様子を見ていた

「 貴方に羽は・・・」

自分の前に空から舞い降りてきた、この妖精の羽は見えない・・・と、そう思って背中を覗き込んでいた


「 あぁ・・・羽はね、まだ生えてない・・・」

そう、まだ自分は王子として国王の下に限られた国の統治にしか携わっていない
だから、自分の国と成る時には・・・
后を迎えて対になり、一人前の皇族として認められる時で

その時は、この蝶の様に・・・

自由に空中を舞うかの如く、自由に自分の人生を飛び立つ時だと思って答えていた


ふ~ん、そうなの・・・?そう答えが納得いかない彼女に、うん、そうだよ。お父さんが大きすぎてね、自由にまだ飛べないから、と答えていた


「 じゃぁ、貴方は、妖精の王子様なのね。やっぱり。 」


うん、そう。王子・・・そう答えながらも真相を明かさないのは、この今を彼女の思い出の中で綺麗な夢のようにしてあげたかったから


「 お供が、教えてくれた。 」

そう言って、蝶のとまった花を摘み、その花を彼女の前に差し出した

「 君は、プリンセスなのかな・・・」

何も答えずに、にっこりと微笑むその笑顔は、毎朝彼女が自分に向けてくれる同じ笑顔と違う
この数日・・・自分に向けてくれた笑顔が、少し違うものだとは感じていた

彼女と繋いでいた手を離し、両手でこの大輪の花を包んだ

彼女の顔の前に花を包んだ両手を差し出して、目の前で手をゆっくりと開くと・・・

二人の手で温まっていた自分の手が、この花の香りを膨らませる様にして
二人の間に・・・

甘く高貴な香りが広がって、吹いた風が二人を香りで包んでくれた


_____ この花はね・・・クイーン・ローザ 

この国の王女様の花と言われる・・・


言葉に出して伝えることはしなかった

でも、自分に向けてくれた笑顔が・・・
毎朝、自分の手からの口付けを受けて、閉じた瞼を開ける時と、同じになっていた
君は幸せを感じている時に、自分に向けてくれる笑顔で、それは子供の頃から変わらない

だから・・・

自分が今、心で思ったことが伝わっているのだと感じて嬉しかった


君の髪にこの花を飾ってあげたいと、思っていたさっき・・・

風に揺れる髪を、毎朝と同じ様にそっと撫でて、桜貝の飾りの無い髪に花を飾った


いつか、君が自分と対に成ってくれる時・・・

自分も一人前の皇族となり自国を管理と責任に、命の終わるまで苦労を背負うだろう
でも后と君が成って、いつも横に居てくれたなら

この幸せに満ちた笑顔をいつも向けてくれていたら

自分にも幸せを齎せてくれる事だろうと、願って止まない・・・


「 キョーコちゃん、おいで・・・」

もう一度手を繋ぎ引っ張って歩き出したのは、海の方角
でもそれでも、ゆっくりとこの時間を楽しむ様に、毎晩二人で話をする様に・・・

海の中では決して今まで言わなかった

この地上に視察に訪れた時の、話をしていた . . . _________



髪に飾ったクイーン・ローザの花

その香りに誘われるかのように、彼女の回りをたくさんの大きな羽をもった蝶達が舞い

木漏れ日の照らす、川面の光がきらきらと、流れに沿って輝いていて


この光景に・・・

この川の水が流れ着く先に、自分の国があるのだと・・・

自分の国は、この輝いた光の国の恵みを受けて満たされているのだと感じていた


・・・君の周りを舞う蝶に


「 貴方は、たくさんの国民に慕われている、王子様ですね. . . 」

そう言って、くすぐったそうに浮かべる笑みを見ていると・・・
自分が国王に成った時には、そうなれる様に、そして、王妃と成ってくれる君に

そう思って貰える様に成りたいと思って、何も言わずに微笑んだ __________




もうすぐ浜辺というところで、水の流れが豊かな河を鏡の様にして、花を飾った姿を映している

微笑みと香りに、この時を楽しいと・・・その、海に続く水に映して・・・


海からの風が懐かしさを思わせる、自分の国の香りなのだと気が付いた

光の国の森と花の香りと、海の国の波と潮の香り

二つの国の香りを同時に運んでくれる・・・

風が・・・

髪に挿した花を ふわっと飛ばして、河の流れに落ちて海に流れて行った


繋いでいた手を思わず離し追いかけようとした時に、握っていた蒼い石が河の中に落ちた

けれど、花と違い河の流れに影響する事無く、河の中に沈んで見える


その蒼い石を河の中から拾い上げた

蒼い魚は、河の淡水には元には戻らないのだと思っていた
それと、割れていないか確かめ様と空の光に透かし翳すと・・・

・・・スゥーっと色が光の中に変わって見えた


それには・・・
壊れてしまったら、この魚の命を自分が終わりにしたと、心にきっと何時までも傷となって残りうる

その性格を知っているから・・・

明るく幸せなまま人生を過ごして欲しいと思う

自分のいつも横に居て・・・  ____________



「 色が・・・変わった・・・」


_____ それから・・・“ 時 ”を知らされたら、海に戻りなさい
蒼い石の色が変わった時が・・・その、時ですよ・・・


遠のく意識の光の中での声が、頭の中に蘇る様に聞こえてきた


そうだ、海に戻らないと・・・ ____________





「 ありがとう・・・」




重なった二人の声が、河の音と共に微かに聞こえる波の音に混ざっていた
・・・この時を忘れない


_____ この時が、もう一度・・・

_____ いや、何度でも・・・



二人の間に流れる時が、また来ます様に・・・



河の流れの音にも、海の波の音にも、消されない・・・

・・・二人だけの心の言葉が、お互いの間に聞こえていた様に感じていた




_____  クイーン・ローザ ・・・・

その花の香りで永遠に包み

     その花の香りを胸の中に

     自国の王女となる、我が后として

永遠に共に、明るく幸せなまま過ごして欲しい・・・



どうか、我が愛しい姫を・・・

どうか、我が国民、姫が無事に離宮に辿り着くまで・・・ 

この豊かな地上の恵みの国から流れてくる、森の香りを 花の香りを 風の香りを
蝶の様に、我が国に舞う魚達国民の一人として

姫を最後まで、護り給え ________


海に続く河の中で欠けもせずに居てくれた、強い意志を持ったお供として
自分の願いを託して、この蒼い石に唇を付けていた

自分の強い想いは・・・いつもこうして、毎朝彼女に伝えてきた

自分が共に離宮に戻れるならば、そうしたいのはもちろんの事
でも・・・
彼女は、自分の事を妖精の王子様だと思っているから、彼女の中に楽しい思い出として
そのまま、妖精で今は居たいと思っていた


蒼い石にキスをして、彼女の両手を取り上げてその手の中に石を収め、その上から両手で包み込んで、微笑みかけた


「 無くさない様にね・・・」

彼女の両手を包んだまま、自分の手に唇を付けてゆっくりと目を閉じた


目を閉じたまま、包んでいた両手を自分から離して彼女の手の温もりを感じない様にし


遠ざかる・・・

水の中をゆっくりと歩く音が、河の流れの音と、海の波の音に小さく消されていった



波打ち際に自分も辿り着くと其処には・・・

彼女の歩いた足跡が、砂の上に残っている

でも その足跡は、打ち寄せる波に砂が被さり 海の中に引き込まれる砂となり

二本の足で自分から海に消えて行ったと、薄くなった足跡に感じていた

その波が押し上げて、引いて・・・

河から辿り着いた赤い花を、海の中に一緒に連れて行くように浮いていた



風が吹いて、舞い散る砂が光を浴びて

きらきらと輝くその光景の中に、自分の国に舞い落ちるプランクトンの光を思わせて

自分も離宮に帰らなければ、誰にも言わずして胸騒ぎの感情が起こした勝手な行動を、国王に王子たるものと、咎められては・・・

そう思い、急いで海の中に入って行った



Love Letter from RT and CH