恋愛も、仕事も、友達付き合いも完璧で理想の男-第3話 10:40pm

Posted by 美海 * mimi on 22.2014 DRAMA
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__________ 10:40pm





午後3時ごろ・・・帰社すると、デスクに箱が置いてあった。



箱の下には、書類も重ねられていた。

箱を除けて書類を見ると、プラダのヒールのミラノチームの子に任せた昨日の企画書だった。
でも、それに目を通すことなく、箱にかかったリボンをするっと引っ張った。

リボンの色と箱の色のセンス、リボンのかけ方もなかなか好いよな・・・

そう思いながら箱を開けると、きれいに並んだクッキーが入っていた。



それを見たとたんに、どう言い出そうかの切欠を掴んでいた。




このクッキーの差出人であろう、プラダのヒールをはいた綺麗な子を呼んだ。
その子が席を立つと思っているよりも少し遅めの速度で、近づいてくるのを見ていた。



・・・その

フェラガモの靴を好んで、きちんと形を崩す事無く、歩き易い程度に下ろして会社に来る子。
早足でコンパスの長い俺たちに遅れる事無く、午前中もランチの後もついて来た。
昨日のロッシも歩きやすさと自分の留学経験からのイタリアの感覚に尊敬があるとも判断した。

プラダの新作を下ろしたてで来て、スーツに似合ったヒールの高さで来た子。
この午後になって、ピンヒールの高さに足の裏の指の付け根やアキレス腱が痛いので会社の中で歩く事もめんどくさい。と思っているんじゃないかと見える。

二人ともがもちろん、綺麗に自分に似合っているけれど・・・

・・・外に回らなければ成らない、忙しい仕事に対する、熱意を感じたのは・・・

歩く事を重点に、仕事に関してだけ思考が行くように、歩き易いフェラガモの靴をきちんと履きこなしている子に決めた。

もちろん、プラダのヒールが悪いわけではないけれど、足が痛くて仕事がおろそかになる事。
どうでもいい、足が痛い。などとちょっとでも思うと云う事は、仕事に関しての熱意を殺がれると判断。


プラダの子には、チーム補佐として、デスクワークの雑用を重点に・・・

「 ・・・ごめんね。悪いけど、そういう事で。 」

「 ごめんな。でも、宜しく。座ったままできる事だけ、やってくれればいいから。 」


俺たちにそういわれた子は、納得が行かないみたいに見える。
朝、一番に出社した事は、仕事に関しての彼女の誇りと熱意を感じていたけれど・・・

この午後になったら、足が痛いです。などと思わせる行動が、目に余って・・・。ってのもあった。


「 ん~、でも、朝さ・・・俺、言ったよね? 」


横で、ぷっと吹き出した同僚の顔を思い出しながら、その子の顔を見詰めたまま、新しく今日チームに入れたフェラガモの子から封筒を受け取っていた。

その封筒を開けて中を確認した。横では、朝にも気づいていた同僚が、だよな~。と言う。


「 今日一日・・・? 足元に気をつけてね。ってさ・・・」

じゃぁ、はいコレ。レイアウトだけでいい。写真は決めたから。宜しく。そう伝え微笑んだ。


「 あのね、出来ない。って思ってないから。 」

ただ・・・ この3時。24時間、君にはあげたけれど?と、目の前のタブレットの時間を指して伝える。封筒を手渡してくれたフェラガモの子は今日だけ、朝から6時間でここまで出来た事を教えてあげた。


「 でも、レイアウト。 」


その大きな封筒を彼女に手渡して、クッキーの箱を差し出しながら、付け加えた。


「 これはね・・・君のセンスを買って頼んでいる、仕事だよ。 」


そう・・・

この子が作って持って来てくれた、俺へのクッキー。
その箱も、開けたときの中身の見た目の並べ方も、クッキーの一つ一つのセンスも・・・

レイアウトできる子と判断した。

そのセンスが、女の子らしいと感じたのは、雑誌を手に取る読み手の人が女の子だから。




それは・・・

男の俺たちには、ちょっとな・・・。



フェラガモの彼も、横で・・・どうぞ、宜しく。と微笑んで立っていた。



「 じゃぁ、皆で頂くよ。コレ。 」

ありがとう。と付け足しながら微笑むと、お~い。お前やっぱ、良いヤツだな~。と横で喜ぶ同僚。ぱしっと肩を叩かれたので、なんだよ、要らないのか?と聞き返す。

ごめんごめん。と俺の肩を摩りながら、誰か~、コーヒー頂戴~。と言っている。


ざざっと席を離れた、たくさんの子達。

そんなに要らない・・・。と思っていたけれど・・・


デスクに、どうぞ~。と置いてくれるコーヒーは、皆それぞれ違っていた。

カプチーノもあれば、ラテもマキアートも、ブラックのアメリカーノも、はたまた泡を・・・
ハートに描いて持ってきてくれる子もいる。

それらを見詰めて考えていた。


・・・それぞれの個性をアピールしてくれる、この部下達

仕事へのヒントをいつもこうしてくれる事。それは、今まで・・・

横にいるコイツが仕込んで来たに違いないと。



「 お前、本当に仕事に関して・・・」


「 いんやぁ? 仕事じゃないよ。 」


ニッと笑う同僚に、ふっ。と笑って返した。
小銭をフェラガモの彼に手渡し、自販機を指差した。彼は笑って買いに行ってくれる。
その間デスクに並べられた、さまざまなカップを見ていた。


「 どれも、選びにくいな。 これだと・・・」


「 だろ? 」

やっぱ、お前なら分かってくれた。小声でそう言われた事は・・・


社内恋愛、禁止。 イコール、黙秘。

それをいい事に、たくさん手を出しているコイツ。
誰も何も言わない様に、うまく丸めているんだろな。と思いつつ・・・

どの個性も選べない、選択肢が目の前に置かれたのをみると、全てに一口だけ・・・

口を付けた。


「 ほら。お前も・・・」

そう言って、一口ずつカップに口を付けたのを見ていた同僚には・・・
耳元で小声で囁いた。


「 ふふ・・・、わかるよ。試してみないと・・・」


「 そう、わかんないもんだよな。 」


プラダのヒールの子を目で追っていた。彼女の作ってくれたクッキーの箱を全部、同僚の前に置く。蓋を目の前で開けて、フェラガモの彼にも見せた。


「 なっ。女の子の気持ちとセンスは、俺たちには難しいよ。 」


ココと・・・そう言って、胸を拳で軽くトントンと叩き、

「 もう一つ・・・」

人差し指を同僚の目の前に出して・・・

その指を自分の唇にあてて、コホンと小さく咳払いを喉でした。
そうなんだよ。ソッチの相性の方が俺には重要かもな~。と言いながら席を立った同僚について、個室の会議室に3人で向かおうと立ち上がり、たくさんのコーヒーを見ながらタブレットや書類などをまとめ始めた。


一つだけ、気に成っていたカップがあった。

シングルショットのエスプレッソの小さいカップ。横に添えてくれた水のボトル・・・

・・・俺が好んで飲んでいる、水の銘柄だった事。


そのカップを置いていってくれた彼女を見ると、PCに向かってタイプしていた。
その水のボトルだけを取り上げて、バキッっと蓋を開けて、ごくごくっと何口か飲んだ。


「 喉、渇いてるのか? 」

「 うん、まぁね・・・」


そうだよな、そんなにコーヒー要らないよな。と言いつつも、会議室に持って入るコイツの手の中には、好みのラテを入れてくれる甘い香りの彼女が作って置いて行ったマグカップの他に、俺が飲まなかったカプチーノを持っている。


「 あれ?それ、試すの? 」

「 あぁ、でもさ、ハートのだけは、遠慮したよ。 」


ミルクが嫌いなわけではないけれど、あまり飲まない俺。口を付けなかったミルクが多そうなコーヒー。学生時代からのままの好みは今でも変わらないという事は、こいつが一番わかってくれて、そして俺もコイツの事をよくわかっている。
似ているけれど対照的なところもある。それは、似た観点での“ 対称 ”である事。
それに関しては、コイツの好みは・・・甘くてフワフワしている・・・




「 さっじゃぁ・・・会議始めるよ。 」



男だけの会議には・・・


今朝のサンフランシスコからの電話が糸口だった。

女性に書かせた記事と、男性に書かせた記事の二つを比較して書いているジャーナリストから。
ファッション誌に関係ない記事を書いていた頃の友達だった。

比較してもらったのは、同じテーマが多いクリスマスの頃のもの。時期は外れているが感性に関しては、的を得ているものがたくさんあるから比較し易いのではないかと聞いてみた。

自分が考えていた事とほぼ同じ意見に、この同僚も同じ事に気が付かない訳は無いと思っていた。それが、このフェラガモの彼に直ぐ電話をしてくれたのを見て確信に変わっていた。
それは・・・



男の観点でみた・・・欲しい物。

女の子の観点でみた・・・つけて、欲しい物。



イタリア版の同じ雑誌に乗っていた商品と日本の商品はまったく違うので、内容を書き直さないといけないページだった。

男の俺たちが選んだものは、自分がプレゼントされたら嬉しくて、自分でも進んで身に着けるもの。

プラダの彼女の規格案には、女の子が彼氏に付けてほしい物であって、男としては、どうだろな・・・的な欲しくない物ももちろんあること。昨日会議でそう考えて引っかかった事で、サンフランシスコの友達にそういった類の記事の売り上げ比較を頼んでから、同じ立場のこの同僚に意見を求めようと思っていた。

それでは、贈り物に対しての観点でのサジェスチョンができないので、男が選んだ、男が欲しい物。を載せた方が絶対いいだろ。と今朝、この同僚が選んでチームに入れた子と、話し合ってきた今日だった。
クッキーの下に置いてあった彼女の書類を見なかったのは、必要なしと取った為だった。


彼の好みは・・・

俺と、この同僚も、選ばない。対照的なセンスを持っている子だった。


それは、良いも、悪いも、似ている俺たちにとって・・・

良いも、悪いも、全く反対の観点から見ていると思われる、彼の選ぶ服装と身だしなみによる、普段からにじみ出る彼のセンスを買って頼んだ仕事。

こうしてなるべく偏らないようにしなくては成らないのも・・・

このチームの他の2人の女の子も、それぞれ違う個性をしっかり持っている子だと見極めてくれるコイツには、かなわない。

それを知っているのは多分・・・ _____________





・・・・・



あなたの今の想像は、もちろん・・・



__________ 10:55pm Ending




「 おっ、旨い。 」

と、勝手に人のデスクから持ってきて、一口飲んで、どんな味が好みなのかを知ろうとして、
箱にも手を伸ばし、一番甘そうなシュガーアイシングされた上に、コーヒーシュガーを回りに塗してある、見るからに甘そうなクッキーを頬ばった。

「 う~ん、甘すぎるぐらいが丁度いい~。 」

そう言って、彼女が入れたのではない方のカプチーノで、ゴックンしている。



「 女の子が? 」

そう聞き返しつつ・・・
このカプチーノの子には、まだなんだろ?と小声で言うと、あぁ、判っちゃった?と返す・・・

・・・貴島秀人。



「 でもさ、もしかして・・・?」

パリ・チームとミラノ・チームにコイツが分けたこの子達のセンスが違う事も、彼女たちから受けた印象と服装と、そして、もうきちんと仕上げの手前を部長に見せてくれていた仕事振りも、

どう手順を踏んでもこの子達の内面にある個性が違う事を見抜いているって事は・・・


「 それぞれ一口だけ試した? それとも・・・? 」




_______ カチャ・・・

缶の蓋を開けたけれど、それを飲まずに水を飲んでいた。


会議室のテーブルに置いた、半分残ったペットボトル。タブレットを開いて話し始めていた。

窓の外から暖かい日が差し込んで、半分残ったペットボトルに光が吸い込まれるように、綺麗な薄いブルーの透明な影を、その先の写真に映していた。


コツッ・・・


ペットボトルを指で弾くと中の水がユラユラ揺れて、その透明な薄いブルーの影もきらきら光りながら揺れている。



その影を見ていたら、同僚の貴島秀人がその写真の載っている 開いた雑誌のページに気づいていた。


「 あれ? これ・・・お前? 」


「 あぁ、そうだよ。・・・モデルもしてた。 」


アメリカ版の同じ雑誌。広告のページに載っているモデルは、実は俺。
自分の写真に写ったペットボトルの光が・・・


・・・自分の後ろに光る未来の様で、

目を瞑って微笑んでいるこの写真には、この水の透明なブルーの光の影は、自分が水の中に居るように映っているとも、その水の様な落ち着いた心で安らかな笑みを見せているとも、ゆっくり揺れる光の影にゆっくり流れる時に癒されている様に見えるとも・・・
そう自分の写真を思って見ていた。

自分には、この水の銘柄をしっかりともう覚えてくれて、それに・・・

黒いコーヒーの色で見分けて、少な目で美味しいコーヒーが好みだともう気づいてくれて、

皆がいろいろ出してくる事も判っている事で、お水を横に添えてくれた彼女が気になっていて・・・

その彼女のくれたペットボトルからの光が、自分の未来を綺麗な色に染めてくれた様だと思って微笑みつつも・・・

よかったらこれ、全部食べていいよ。と、部下にクッキーを差し出し・・・

のどが渇いているのは、いやこの水が飲みたいと体が欲するのは、違う理由の受け入れ方かもな、と思って、そのペットボトルを手に取り見つめた・・・



・・・敦賀蓮 ___________






もちろん、3時のコーヒーの差し入れを、
フロアの全員の女の子から受けたのは・・・


・・・彼






第4話に続く。We Dive in… 4冊の雑誌

* ミラノ・パリ・ニューヨーク、3チームと日本版・・・ 


Love Letter from RT and CH