恋愛も、仕事も、友達付き合いも完璧で理想の男-第3話 10:20pm

Posted by 美海 * mimi on 22.2014 DRAMA
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________ 10:20pm



昨日のランチの時、フロアの全員が自己紹介してくれたので挨拶代わりに自分も自己紹介して・・・

「 いつでもどうぞ。 」

と、全員に携帯の番号とアドレスを教えたのはもちろん、仕事の為なんだけど・・・

昨日は日本に帰国してまだ一日。自分の住む所も荷物が届く日だったから、誰ともどこにも行かずに、真っ直ぐに初めてのマンションに行った時だった。

ずっと電話が鳴りっぱなしだったので、何かあったのか?と初めは思っていたけれど・・・

出てみると今夜は何をしているか?との質問。それから電話はミュートにしたまま、一晩放置していた。時差ぼけも手伝って・・・早い時間に寝てしまったし、コイツは昨日はデートだったから掛かってこないのは分かっていた事だった。


今コーヒーを飲みながら、携帯をみていると驚くほどの着信履歴があって、思わず・・・
ふっと一瞬笑ってからは、画面をじーっと見詰めたまま黙って見ていた。


「 どうした? 」


「 あぁ・・・」


そう一言言って、スマフォの画面をホームに直し、コーヒーと一緒にデスクに置いた。


「 いや。時間設定をしてなかったから、まだニューヨーク時間のままだった。 」


「 ま、昼と夜がちょうど逆に成るだけだろ?一時間ずれただけの・・・でもなんで・・・
お前らしくないよな・・・」

そう言われてみれば、完ぺき主義なのになんで設定し直さなかったのだろうと気付いた。


「 誰かに・・・未練でも残ってんの? 」


いや。誰とも付き合ってはなかったし・・・そう言い返せば、未練を残して去って来たわけではなかった。

それは、誰。

その意味ではもちろんなかった。
自分が長く住んでいた場所を離れる事は、日本を離れる時にもう経験していた。

あの頃と同じ様に、自分の未来だけを見詰めて生きる事に関しては、変わらない。

一度でも自分の未来の姿がおぼろげながらも見えたとしたら・・・
後は、それに則って自分でそれを創っていくだけ。そう・・・単純明快なだけ。



もしもし、悪いけど、今どこ? 隣から声が聞こえてきた。

さすが何も言わずとも、もう仕事に関しての言いたい事が解かってくれていた。

電話で話せる相手と云う事は、乗り物の中では無いという証拠。話しながら、自分のデスクのPCをパスワードが掛かるように画面を変えている。

今見ていたタブレットをもう一度見直してピンチで画面を閉じながら、自分もPCにはパスワードをかけた。

携帯で話しながら席を立ったのを見計らって、自分も席を立った。でも、一枚のメモを渡されて見ると、部長宛。

もう出掛けました。だけ・・・

その名前の横に、自分の名前も書いておけ。って事だと言うのは言われなくても分かるので、名前を書いて、自分の横の部長のPC画面にぺタッと貼っておいた。


まだ誰も来ていないフロア。キンコーン・・・とエレベーターの音が廊下で聞えていた。



「 おっ、急げ。 」

ん?と思ったら、もう急ぎ足でエレベーターに向かった。もうすぐ時間的になかなか来なくなる事は、自分でも分かる。
おっはよ~。ちょっと開けといて~。と廊下でデカイ声を出してエレベーターを開けてもらっている。エレベーターを開けて待ってていてくれる子は・・・

昨日選出した、ミラノチームの一人。

昨日もだったけれど今日も、自分に似合ったイタリアブランドのスーツを着ている。


「 おはよう。 ありがとう・・・」

微笑んでその子に挨拶。そして、挨拶代わりの、上司としての一言を付け足そうと思った。

「 今日のプラダのヒール。新作だよね? 今日一日、足元に気をつけてね。 」


もう既にエレベーターに乗っていた同僚が、プッと噴出している・・・
その横に乗って、バイバイしながらドアは閉まった。



________  キンコーン・・・


階下に着くと、早めの出社時間の部署の人たちが大勢エレベーターの前に待っていた。
その中を、すんませ~ん。と言いながら降りる同僚の背中を追って降りたら、エレベーターを待っていた中の一人の肩を抱いて、エレベーターから遠ざけているのを見ていた。

おい、名刺出せ。そう言って名刺を出させている。俺の前にその名刺をすっと差し出すと、2枚ある。

その意味に直ぐ気が付いて、ポケットから自分のシルバーの名刺入れを取り出しながら、ロビーに向かって歩いていた。


「 ごめん。悪いけど、部長が来たらこの二つ、渡しておいて。 」

受付嬢のハーフの子。
自分の名刺と今同僚が拉致った子の名刺を差し出すと、うふっと微笑んで肩を上げたけれど、

かしこまりました。と、綺麗なお辞儀を返してくれる。

商用のきちんとしたところと自分の感情が混じった、かわいいお辞儀に、ウインクで返した。

きちんと目を見詰めて、お出かけの旨を伝えておきます。行ってらっしゃいませ・・・
そう言ったこの子の “ 行って ”の・・て、の発音が引っかかったので、声を掛けた。


「 君、名前は? ・・・イタリア語だよね。多分。 」


オイ早くしろよ。そう叫ぶロビーの向うで待っているその同僚には、受付の子を見つめたままドアの方に居る同僚に手を上げて・・・

「 ごめん。じゃ、宜しくね。 」

そう言いながら、二つ並んだ名刺の一枚。自分の方の名刺を指差して、その指で名刺をトントンとタップした。

ドアの外で待っている同僚の傍に行くと、拉致られた子も苦笑いしている。


「 おい、社内恋愛は、うちの会社・・・」

「 あぁ、禁止だろ。 」


でも、まぁ・・・まんざらでもないだろ。うちの会社。モデルみたいな子多いし~。
そう言う同僚と、もう一人の子と並んで歩き出した。

そうだね、背はまちまちだけど、容姿もセンスも拘りも・・・自分をよく分かっている子が多いかもな。・・・そう返して、今、拉致られた子の足取りを見ていた。


Salvatore Ferragamo

「 うん。いいんじゃない? 」

だろ?っと返してくれる同僚。本当に言いたい事が分かってくれるコイツの他に、自分の仕事に対する姿勢と誇りを任せられる信用は・・・

良いも、悪いも、全て見分けている。

そう思えるからこそ、任せて安心だと思いながら、仕事の内容を拉致った子に話し始めた。


昨日この子が履いていた靴は、Sergio Rossi
今日のスーツもバシッとしていて、長身で足早の俺たちの間にも臆する事無く、歩いてついて来てくれる。ロッシもフェラガモも・・・この子の好みとセンスが判っての拉致だった。


「 じゃ、まずは俺の行きたいところから。次いで・・・。 」

いいよ、俺の行きたいところは同じだろ?と同僚に返すと、そうだろな~、俺たちじゃ好みまで同じが多いからな。と帰ってきた。


「 それもだけど、あの受付の子。 」

お前も気になったか?あはは~と言われたので、まぁ・・・カワイイとは思うけど?と返しておく。


もうひとつ手元に持っていた この拉致ってきた子の名刺を見てポケットにしまった。
語学の所に、イタリア語と俺と同じ様に書かれては、いる。

でも、会話、なのか、文章だけなのか・・・
それとも、数年留学しただけの、日常会話と大学の講義用の言葉だけなのか。

疑問があったので、それについて聞いてみると留学経験が2年あると言う。2年か・・・
2年じゃな~・・・はっきり言って微妙な会話と講義が聞けますぐらいだな。と判断。
微妙にプライドがある2年の留学。大学の卒業は日本なのかと思っていた。

2年居たという事は、帰国したのが今から2年以上前の話だと、もうすでに忘れているんじゃないの?とズバッっと聞くと・・・ハイ。との返事。

どっぷりその国に浸かっていると、直ぐに思い出すんだろうけどね。とフォローも付け足す。


「 じゃぁ、やっぱり必要かもな。 」

何が?と言いながらもニヤッと横目で見て微笑んだ同僚には、もう判っていると思えるので、それ以上は言わなかった。



_______ さっき受付のハーフの子に差し出した自分の名刺。

名刺を叩いて指した箇所は、自分の部署。

英語は大丈夫。でもイタリア語。
読み書きはまぁまぁだけど、電話に関しては、宜しく頼むかも?と云う意味で指していただけだった。


「 ふっ。でも、名前も覚えてくれたら・・・」


「 そうだな、一石二鳥だよな。 」



Love Letter from RT and CH