恋愛も、仕事も、友達付き合いも完璧で理想の男-第2話 10:20pm

Posted by 美海 * mimi on 22.2014 DRAMA
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_______ 10:20pm



退社したままのスーツ姿の友達に合わせて、タイをしてレストランで食事を済ませた後、そのまま緩やかな螺旋階段で繋がっている、一つ上の階のバーに行った。


階段を登っていると、微かにピアノの音が聴こえて来た。

上に着いて窓際の窓に向いたカウンターに並んで座り、運ばれてきたグラスに目を移した。


「 乾杯。再会に。 」


カチッとグラスを合わせて微笑み合うと、一口飲みながらお互いに窓に目をやった。


眼下に広がる光景は、色とりどりのネオンと車のライト、そしてビルの明りに遠くに見える観覧車。

全ての光が、淀んだ空気にユラユラ揺れて、全ての光が瞬いて見える・・・

本当に星空のようにキラキラと輝いていた。


「 そういえばさ・・・」

話し始めた昔の事。お互いが心にいつの間にか自然と刻んでいた事だった・・・


_____ もし、会社の同僚として食事に来ていたとしたら・・・

昔の話はしない。と思っていた。

これから二人で仕事をしていく仲に、未来を見詰めてそれだけを追いかけるつもりでいた。
過去の事はお互いの中にだけ収めておけばいいことで、考えなければ成らない事は、仕事の未来の事だけたと思っていたから。


_____ でも、友達として食事に来た・・・

未来の話は後で。・・・明日から、十分相談しあって創り上げていけばいい事。
今日はこのまま昔の友達として、昔の事を思い出してもいいと思う。

そう・・・お互いが学生だった頃、自然と気持ちの中に起こっていたその事は・・・

未来を見詰めて、それだけを追いかけると云う約束だった。

どんな事にも全力で、どんな場所に居ても全力で、そしてどんな時にも全力で。
そうやって一緒に夢を目指して勉強してきた仲のコイツとは、本当にいろいろ語り合って
何度と空の白むまで話して来た事だったろう。


その夜明けに、二人で朝マックしたり・・・

・・・朝マック中のOLさんを口説いたり

同じ大学の学部の違う女の子に話しかけられたり・・・

・・・OLさんが居なくなったのを見届けて、横からその女の子を口説いたり


二人の思い出話には、被せるようにお互いが違う事をしていたと感じる。

でも、一つだけ同じ事。それは、朝になるまで熱く語っても、勉強している事に関してではなかった事。

二人とも未来の自分をただ、想像していて・・・
こうしたい。では、どうする? そうすると。では、そうなる様には? んじゃ・・・

その繰り返しと、被せ合いだった。


その思い出と共に、今がある。


二人が心に自然に刻まれていった、目標とする自分達の未来。


その今は・・・その頃のお互いが語り合った事を物語る。そう、今の自分が心にあの頃刻んだ自分だと、自分でも思える様に成っていると・・・

・・・お互いが話していた。


______ カラン ・・・


グラスの中の一つの氷を人差し指で、そっと転がしていた。
少し溶けた氷の表面に、バーの上のライトが当たってキラキラとしたたる滴になって写っている。そのグラスの淵をその指でなぞり話しながら窓を見ていた・・・

向うにキラキラ瞬いている、都会の地上星空。

でも、その目の前のガラスに写る自分とコイツの姿を見ていた。
手を軽く握って、その手で頬杖を付いて俺を見ながら話している、その顔が・・・
柔らかな優しい瞳で見てくれている事に気が付いた。

そうか・・・

そんな優しい気持ちに成れるような思い出なんだ・・・と、嬉しくなって、ガラスに映ったコイツに向かって微笑んだ。


目を瞑り、締めていたタイを少し緩めて目を開けた。

「 そうだったね・・・」

「 そうだよ、そんな事もあったよな~。 」

そういう友達にウインクして、横目でチラッと促した。

なに? そう言いながら振り返って視線の先に二人で目を向ける・・・


ピアノから流れてくるこの曲。Erik Satie -Lent… 

この作曲家の事を書いた事もあった。彼の創る曲には、二面性がある事。

・・・精神状態を逆撫でる様な、思ってもみない音を選んで奏でる曲。人の心をその思った通りの音と違う音を重ね合わせ続ける事によって、精神状態を落ち着かせなく、高揚させる為の曲。

・・・今流れているLentには、Erik Satieの、心が沈んだ底にあるけれど、その底辺では落ち着いた静かなままでいられる安心感を奏でている曲。


この曲を聴いていると、昔の・・・

見るものも見ず、聞く事も聞かず、促されれば無視し、人に任せずわが道だけを見続けてきた
俺達が見ていたのは、自分だけだったよ。と、思い出した事を口に出した。

Erik Satieの曲の様に、自分が壊れそうな精神状態に・・・それでも楽譜におこして残した歴史の一部となった事。

ただ、自分の事だけでがんばってきた自分も、二人の軌跡には、楽譜に残して置くように、心に刻まれて残り、その刻まれたものは危うく脆いものだったとしても、ハッキリと思い出せるような、完全なるモノに変わっている事。


そうだよな・・・相槌を打つその横顔に浮んだ笑みが、本心から納得してくれた証拠。

二人の追いかけていたあの頃の夢は、お互いこうして、本心から納得できるようなものとなって、そしてその時の思い描いた未来が・・・

・・・お互いに、今の現実としてある事を、もう一度噛み締め、目を瞑って微笑んだ。




Love Letter from RT and CH