To be my Grace - XXXI * One More Love . . . at Last . III

Posted by 美海 * mimi on 23.2014 To be my Grace
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________ コンコン


『 松。どうした? 』
  

ドアが少し開いていたオレの部屋。親父はドアをノックし直ぐに顔を出した。
親父に声を掛けられたけれど、何もいえない気持ちで一杯だった。
胸が一杯で、まだ板場に寄ってこなかったから、帰りに全部持って帰ろうと思っていた。

その時親父が、オレが座っているベッドの前に椅子を持ってきて座り込んだ。


『 いいから、あっち。行って来いよ。 』


窓の先の竹林を指差して言っていた。キョーコとアイツが居る貴賓室の方だった。
終わったから呼びに来たのかとも思っていた。



親父が来る前・・・・

オレは、正座。というお袋の言葉に、何か説教垂れんのかよ。と思って時間潰しの為に見始めた古いアルバムだった。

本棚に置きっぱなしに成っていたから、上の部分は埃を被っていて、ゴミ箱の上で ふぅーっと息を吹きかけ手で表紙を掃った。

“ 松太郎 ” 

自分の名前が、書道の達筆なお袋の文字で書かれていた。けれど長年の墨は薄ぼやける様に、自分の名前にいい味を出していた。

その色が自分の歴史と共に時を追いながら、これからも変化してゆく物だと感じてアルバムを捲った。

子供の頃のキョーコとの写真が一杯で・・・

棚から何冊も引っ張り出しては、表紙のお袋が書いたオレの名前を確かめていた。
表紙には何歳と書かれていなくても、その墨の色でどれが古いのか墨の歴史で分かる様に書かれていると思っていた。

心を込めて墨を吸ってくれたのだと思ったのは、色あせた墨の色はどれ1つ無かった。

自分のどのアルバムを見ても自分の記憶に無い小さいうちから同い年のキョーコと並んで写されているものばかりだった。

最後のアルバムには、ここを出る前の中学生だった頃の、芸能人に成りたいと思っていた頃の写真だった。ここを出る時の事を思い出していた自分。



あの時この部屋で・・・



目を瞑って考えていた。




________ 目を瞑ると見えてくる・・・


思い出すのはキョーコもアイツも・・・そして今は生まれ・・・

まだキョーコのお腹の中に居た2人の子供もみんな出ていた映画。



この家を出る時、瞑って見ていたのは自分の未来の姿だけだった。




________  目を瞑ると・・・きっと見えてくる・・・

     
満点の耀きが、貴方の瞼の中に

      
目を瞑ってもし見えたら・・・

      
溢れ出した涙に想いを乗せて、その空を見詰めて


      想いが・・・


      届くと、願ったら・・・きっと・・・・


      貴方を捕まえてくれるだろう 



      美しく優しく浮かび上がる幻 ・・・・・






“ 貴方の心に浮かび上がる物 ”


自分が見ていた先は、美しく優しく浮かび上がっていた幻の姿の自分。

勝利の女神が微笑むときっと自分に差し伸べてくれると信じて

自分の力を信じて・・・


ここに帰ってくる時は、絶対スターだ。


世の中の輝く星の存在に成るのは、このオレ・・・




それしか見て居なかったと、目を瞑って思いだしていた。
短い溜息をついても、もうここまで来た事には、差し伸べてくれた勝利の女神に感謝したい。


“ スターに成って帰って来た。”


その想いが叶っただけで十分だったはずなのに・・・


憤りの様な、寂しい様な、でも瞼の裏に涙は浮かんでも来ない今。

この感情はなんだろって・・・・・


どうにもこうにも、よく分からない気持ちで一杯に成っていたから、話しかけられても何も言い返せないでいた親父の質問に

“ どうしたと言われても、こうだと返せる様なモノは自分の中でも分からない。 ”

そう言いたかったけれど、それを言葉にも上手く言い出せなかった。



『 そうか・・キョーコちゃんの事か・・ 』


親父は静かに声を掛けたけれど、自分にはそれもよく分からないでいた。
だからそれには・・・


『 ・・・好きなのかというのも、よく分からない。 』


親父は、フーっと静かな息を吐いて、俺と同じ様に腕を組んで言い出した。


『 お前、敦賀さんの姿に惚れたんだろ? 違うか? 』


その言葉に目を瞑り、唇をかみ締めていた。
組んでいた足がいつの間にか、貧乏揺すりしていて、ただ目をぎゅって自分でも瞑っていた。


『 そうか、分かるぞ。父さんだって敦賀さんに惚れたんだ。
  松。同じ親子だ。お前と同じ気持ちなんて・・・
・・・俺の半分、お前は持ってんだから。 』


目を瞑ったまま両手を顔に当てて、瞼を指で揉んでいた。手で髪をかき上げて目を開けると親父は窓の外を見ていた。

ハァと溜息を付き、話しかけた。


『 親父。 』


なんだ?と窓の外を見詰めたままの親父に、そっぽを向いて聞きたい事を聞いてみた。


『 キョーコ。幸せそうだったか? 』


あぁ。とだけ返す親父。でもな・・・との付け足しに、俺と同じだったのかと思う。


『 でもな・・・わからねぇ。それというのはな、松。
  父親だと思っていた自分が、よく分からねぇって事。

いつか松と夫婦になってここに来ると思っていた子がな・・・
 残念な気持ちもあるけどよ
 
 娘として嫁に行く子を送り出したいって気持ちもあってな。
 寂しいと思う気持ちと、幸せに成れって応援する気持ちと

 それに・・・

 敦賀さんを見ていたら、格好いい。って自分が男惚れ
男として、憧れみたいのが湧いてきて・・・

そこに嫁に行く娘を・・快く送り出したい気持ちもあんだよ。

でもな、松の方がいいだろ。って言いたい父親の心もあってな。
なんかな。かっ攫われて悔しいってのと・・・
格好いいって自分が惚れた男への応援みたいな当たり前ってな諦めと・・・

・・・・まぁ、俺がそうだ。  

キョーコちゃんの事を好きだったお前の恋愛感情とはさ・・・ 』


親父は俺の頭にポンと手を乗せて俺を見ること無く、部屋を出て行こうとした。


『 俺にはわからねぇ、お前の心の中にあるもう1つ。
  恋愛感情は、親は持ってないから・・・ 』
  


・・・お前はもっと複雑なんだろうな・・・



その部分が複雑だとは・・・

自分にだって心が抉られるほど感じていたけど、ぶつける所が無い様な熱さが心の中に生まれてて、込み上げていた熱さを認めたくも無く、認めたら自分の憤りが向ける先も分からなくなって・・・



自分には分からない感情が口を動かすことは無く、ただ親父が話す事をぴくりとも動かないまま聞いていた。


『 マネージャーさんが迎えに来るまで、ここに居ろ。いいな。
仕事の前に一服、母ちゃんに点てて貰いたきゃ、くればいい。 』


親父が出て行こうとした時、目頭が熱くて出そうだった鼻水をズズっと吸った。

親父が言ってくれたことが、あまりに当て嵌まっていて・・・

なんだか分からない気持ちだった。


敦賀蓮と貴島秀人と、2人の男に男として憧れて
敦賀蓮のプライベートの電話の対応の丁寧さにも憧れて
アイツの子供をあやしている優しい姿にも憧れて
ドラマや映画の中で、女を落とす色気にも憧れて

そして今日・・・

アイツとキョーコと2人で居る姿の間に、もう1人居るのを目の当たりにして



あぁ・・・本当だ・・・・



嘘で居て欲しいと心のどこかで願っていた自分が、落胆した時

昔のままの変わらないキョーコが俺に話しかけてきて、キョーコはオレが言いたい事も分かって返してくれていた事に、あぁ・・・今は、アイツともそうなんだ・・・

そう思い出したら、遠くに行ってしまった気がしていた。


何も言わなくても分かってくれるのは、自分とだけではないと思い始めたら、悔しくて・・・
苛立ちそうでも、アイツの優しく子供をあやす姿に、子供の方がアイツが大好きと抱きついているほど普段から愛を注いでいると感じて、その姿にまた、アイツを羨ましいとそうしたいと・・・

親父が言っていた・・憧れなんだろうと・・・今なら分かる。


そんな自分が認めてしまうことが悔しくて、それでもカッケーって思ったりして・・・
キョーコとは、離れていたから好きかというのはどうか分からない。
でも、兄妹の様に思う気持ちは・・・いつでもあった。


それに、アイツはオレに・・・・

ここに帰ってくる切欠を、キョーコと一緒にと・・・作ってくれた心配りに感謝したい。
でも結婚したのを、見せびらかされた様で・・・

紳士なのか愚者なのか、正義なのか悪魔なのか、それも分からない。

世間の男らが投票した、アイツの理想の父親像 No.1。
自分にはその投票したヤツラの気持ちも もちろん分かるから・・・


キョーコが子供をオレに抱いててくれと手を出した時

この子はアイツには信頼と愛を持っていると思って・・・
自分の腕の中で泣き出すのが怖くなっていた。

子供に理想の父親ではない。と判定を受ける様で、それに・・・
キョーコとアイツの二人の間の子と云う事も、悔しかったのは・・・

キョーコの事が好きだったのだと、自分の心に自分で気が付いた時だった。



親父が去ってから、子供を受け取れなく握り締めた手を見ていた。
一度手をギュッと握り締め目を瞑って自分の膝を叩いた。


泣きたいのに涙が出ない・・・

その感情の欲求にも、自分の中で分からなくなっていた ___________









「 敦賀さん。アイツも俺も・・・アンタのファンだ。
 それだけは、確かに言える事だ。
 その気持ちは受け取ってやってくれ。
 松とは、これから義兄弟としても、どうぞよろしくお願いします。

 それから、もしこの先 披露宴をするのなら
 アイツも一緒に呼んでくださいな。
 
 今はムリだと思うけど、そのうち祝う気になるだろう。
 もしも、松の気持ちがそれまでに間に合うのなら
 ファンからのお祝いの歌でも、松から出せと言っとくよ。 」



貴賓室の玄関先での不破の両親は、微笑んでくれていた。



「 ええな、キョーコちゃん。これからもここは貴方の実家と思いい・・
  
いつでも帰っておいで。

ここの貴賓室をいつでも空けてあげる。
  いつでもここは、貴方の部屋のつもりで
子供を連れて、敦賀さんと帰ってくればいい・・・

おじいちゃんとおばあちゃんに、孫の顔を見せに
キョーコちゃんのお母さんに逢いに来る時は、必ずここに寄りなさい。 」



分かったね。と声を揃えてキョーコに言う不破の両親の後ろの掛け軸に、目が行っていた。


“ 一期一会 ”


その言葉に、本当だったと思う。
ブバリーヒルズの自室にあった、この場所で撮った自分の笑顔の写真。
この玄関先の今自分が見ている風景は、写真の中のまま・・・
微かに写っていた掛け軸の文字は写真の中には、小さすぎて読めなかった。


The One moment, The One meeting

全ての一瞬が全ての一つの出会い。


その時々には、新しい出会いが始まって・・・
その一瞬の新しい自分に訪れた瞬間から、その全ても始まってゆく。

幾度とその一瞬を積み重ね

幾度と全ての新しい瞬間を迎えただろう

それが自分の心も人生も大きくしてくれていると

彼女とここで子供の頃の出遭いも、その新しい瞬間の始まりで・・・


自分の人生の中に新しい瞬間が積み重なって、また・・・

彼女と回り逢う人生の一瞬が訪れた時

今までの自分の瞬間が、この為にも積み重なってきたのかもと・・・

子供の頃に彼女と回り逢ったここ、この言葉の場所から始まっていたと感じていた。



表玄関は旅立つ人が増えてきていて、車を停めたパーキングまで少し遠回りだけれど、お忍びで来る人の為の森の中を抜ける道があるという。


「 あぁ、キョーコちゃん。道、分かるわね。 」


女将さんのその言葉にキョーコは微笑んで、ハイもちろん。と言っていた。


そうか・・・


子供の頃の遊び場は、この森の中を抜けて行った先。
それに・・・自分も、ここから・・・
森の中を探検に横道それて入って行き、河原に向かって歩いて行ったと、大きくなった樹を見上げていた。


2人で森の中を歩き出していた。

朝靄の中の森は、木漏れ日が創る煌きに先が見える様に光り輝いていて、夏の日を思い出させてくれる・・・

あの自分の心の中に煌いた思い出

少し歩くだけで汗が溢れる様に湧いてくる日本の夏を肌に感じ、小川の音に誘われる様に歩き出していたあのときの自分。


そして今・・・もう一つ・・・


あの暑かった日と違い、朝の森には・・・

このひんやりとした空気を肌に感じ、軽井沢の森でもう一度彼女が森から出てきた時も思い出す。

朝日の昇ってきたあの時を、少し肌寒いと感じていたけれど・・・

何がなんだか分からない自分の気持ちが、自分自身を焦らせ苛立たせていた感情。

全ての一瞬が自分に訪れて・・・

全ての一瞬が始まって・・・

たくさんの始まりの中にまた新しい一瞬が訪れて・・・

永遠に続くのであろう、その新しい一瞬が・・・

Infinity 止む事無く流れ続けるこの時に重なり合い また新しく生まれる一瞬



今のこの瞬間も、また新たな始まりで・・・・・



森を歩きながら少し肌寒いと感じたから、キョーコの肩を抱き寄せたのは、腕を組んで我慢した自分を思い出していたから。

あの時は切なくて遣る瀬無くて不甲斐無くて、それでも彼女の事が好きだと自分の心が言っていた。

森から彼女が出てきた時は、この今歩いている森の情景を思い出していた自分。



子供の頃に出遭ったこの森では・・・

一緒に帰る事は無かった。



朝靄の中の森で、一緒に歩いて帰った時・・・

もう一度いつかこの京都の森で、一緒に帰りたいと思っていた・・・・・




立ち止まりキョーコの頭に唇を寄せて囁きかけた。


「 ねぇ、キョーコ。この道を向かって行ったの? 」

「 ・・・久遠・・・ここに、泊まっていたんだ。 」

「 うん。そう・・来てから、思い出した・・・」






ここでこんな会話が出来る一瞬を、どんなに自分は待ち焦がれていたのだろう・・・・・











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At . . . last still continued to..................


To be my Grace * One More Love at Last . . .of LAST

Love Letter from RT and CH