恋愛も、仕事も、友達付き合いも完璧で理想の男 -第6話- 10:00pm

Posted by 美海 * mimi on 06.2014 DRAMA
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Starring _____________


敦賀蓮

貴島秀人







___________  プシュー・・・


地下鉄のドアが開いても、このオフィス街の駅に降り立つ人はまばらだった。
その代わりに乗る人の多い事。


何にも変わらない


この生活とNew Yorkに居た頃と・・・

満員御礼の電車の中は、さほど変わらない光景。ただ静かだな・・・とは思ったりする。
ドア付近の角に寄り掛かって窓の外を見ても、グレーのコンクリートの景色。

何で窓があるのかと、疑問に思う。

地上に出るほんの何駅の為の物であるとは思えない。電車の狭い空間に圧迫感や威圧感を与えない為だとしても、必要ないんじゃ・・・

とは、電車のデザインをする人の固定概念によるものなのかとも、思ってしまう。


う~ん。


腕を組んで目を瞑り考えるのは・・・

その固定概念を覆す事をしなければいけないと云う事。


それは・・・


仕事に関しても

恋愛に関しても

そして・・・


アイツ

友達である、今は同僚のアイツ。


電車の中で次の駅の停車放送が流れていた。ドア付近だった事もあり、目を開けて窓の外を見ていた。速度がおそくなりつつある目の前を流れる様に見える、グレーのコンクリートの壁。


上手く丸めて・・・Yes ともNoとも言わない、グレーなアイツには

固定概念なんて無いと思えるほど奔放で、驚く事の多さは変わらない。


___________  プシュー・・・


ドアが開いて一度ホームに降りると、降りま~ぁす。と2,3人のOLさんの声。
合コンにでも行くのだろうか・・・
きゃっきゃと はしゃぎながら降りてくるその3人に、乗り込む人は待っている。


それでね~、今日の相手ぇ・・・ 
えぇ~っ、マジ? ちょ~ いいっ!


そんな会話をしながら人の間から出てきた子達。
もう一人の最後の子が出てきた時に、乗り込みながら聞こえた声・・・


・・・うん、あのね~、ファッション誌の~チーフぅ?、ぶちょ・う・・ほ・さ・・


ドアが閉まって聞こえなくなったその会話。

思わずフッと鼻で笑ってしまった。

頭によぎったその・・・“ファッション誌のチーフ。部長補佐 ”・・・だろう。


( グレーな同僚じゃないよな・・・。)


この世の中にその役職の人は、いくらでもいるのだから、アイツの訳は無いんだけど・・・
そんな事を考えながらも、さっきアイツから送られてきたメールの文章を思い出していた。



“ 自分で解決しろよ。じゃぁな~。”


アイツは今頃・・・


ウヤムヤに色んな事を角無く丸めて、フワフワの甘ぁ~く蕩ける時間を、

白も黒も

選ばずに過ごしているんだろうな・・・ ___________





自分の降りた駅の階段を登って外にでても、ネオンの明るい都内の街、地上の星空の中で
見上げた空に星は見えない。

その代わり、角を曲がると少し遠くに見える

東京タワーの上部。


ポケットからマンションの鍵を取り出して、歩きながら思う・・・


_____ The differences between Tokyo and New York

東京とニューヨークに何の違いも無い通勤の光景・・・


でも・・・

ニューヨークには、赤と白のタワーは無かった

・・・って、その色に日本の色を感じていた _____________





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           _______ Erik Satie

        Six Gnossiennes III. Lent と共にどうぞ


・ ・ ・ ・* 第6話 We Function in … 6 駅先の *・ ・ ・ ・






_____ すみません。


午前中のひととき。背中に当たる日差しに、着ていた濃紺のジャケットが暑いと感じて脱ぎながら椅子を立った時、話し掛けられた。

ジャケットを背もたれに掛けて立ったまま、その背もたれの上に両手を掛けた。


____ こちらのレイアウト・・・仮のものが、幾つか入っています。


確認とどれにするかの意見をお願いします。と、パリチームの・・・シャネルの子に、ミラノチームの甘い香りの彼女に・・・ニューヨークチームのダナ・キャランの子に・・・
3人並んで俺達二人のデスク前に、分厚い封筒を持ってきた。


「 うん、それで・・・」


モデルを起用するかしないかを、話したかった俺だったけれど、隣の同僚がPC画面から目を離さずに横から言葉を遮る。


「 あぁ、今はさ・・・他の事、俺達しているから、置いといて。 」


そこ。っと人差し指を二人のデスクの間を指して、指した手でついでに・・・はい。と手の平を上に向けたので、俺もその3人の子も、ん? っと、同僚の謎の行動を見てしまった。

でも、俺が見たのは・・・

その反対の手。
左手に注目させている間に、こっそりスマフォを裏返していた。

な~にが映っていたのかは、俺も見ていなかったし・・・ひとまず目の前の2人には見られたく無いんだろな。と思っていた。


_____ えっと・・・置いておくんですよね・・・?

そう言ったダナ・キャランの香る彼女が、一度出した封筒を躊躇って引っ込めていた。


「 うん。そう、ここでいい。 」


手の平を上に向けて開いたまま、指の関節でデスクをコツコツと叩いている同僚の謎の行動に

はぁ・・・と、手の平の横辺り、デスクに封筒を置くと・・・その手の平に白い缶コーヒーが乗せられた。


_____ こちらでいいんですよね?


「 あぁ、ありがとう。 」


自分のデスクの上には、黒い缶コーヒーが置かれていた。
同僚はシャカシャカ缶を振りながら立ち上がり、スマフォを裏返した手でマウスを取ってPC画面をクローズした。


「 じゃ、行こ。 」


タブレットとスマフォを取り上げて、俺のデスク上の黒い缶コーヒーを取り、ほいよ。と言って缶で軽く俺の肩を叩いた。


ふっと微笑んで横を見て、缶コーヒーを持ってきた子に、ありがとう。と言い、自分のPC画面もクローズした。



「 それじゃぁ、男だけの会議。始めっぞ~。 」


そうオフィスに聞こえるように少し大きめの声で言ったかと思ったら、席を立った2人の社員。
今までこちらの雑誌に関してのそれぞれのチームを引っ張ってきたのは、この3人の女の子達だったけれど、ニューヨークからの自分の元同僚が言っていた事・・・

モデルの起用。

これに関しての案を、今朝 部長に一番に伝えていた自分。
それを横目で見ていた同僚は、もうすでに動き出していたと・・・直ぐに感じて、

缶コーヒーをパシリさせられた横に居るフェラガモの彼に、


「 じゃぁ今のその封筒と、これ。 」


そう言って自分のデスクの引き出しから取り出したファイルを持たせた。
横の同僚は缶コーヒーを飲みながら、立った社員二人にえっと・・・PC・・・と言いながら人指し指で、人数の確認をしている。


「 PC 6台、入れといて。 」


はい。と返事をして会議室にノートパソコンをセットさせに向かわせた。
その人数に、もちろん。自分でも思っていた通り。


「 部長も、手が空きましたら宜しくお願いします。 」


自分の横に居る部長は、今日は忙しそうだけどお出掛けの様子はなさそうだった。

それじゃぁ、ここ終わったら行くから。と言われて、携帯を手に取った部長に、


「 ランチまでには終わらせますので。 」


そう付け足したのは他でもない。部長が今 携帯の画面を見た事で、今なん時ですよ。と確認させる為だった。


_____ お前たち、相変わらずサクサク進めてくれるよな。


フッと笑って、椅子に寄り掛かった部長。携帯を耳に当てコール音が鳴る前だろう・・・


_____ 助かるよ。俺の両腕。


そう言って・・・くるっと椅子を窓際の方に向けて、Hello… と話し出した。





部長に声を掛けて会議室に向うと、ドアは開けてあった。テーブルの上にセットされた一台のPC前に黒い缶コーヒーが置かれていたので、そこに座れと云う意味だろな。と思い そこに行くと、同僚のアイツはコピー用紙に手書きで何やら書いている。


「 へ~っ。手書き出来るんだ。 」


「 な~ぁ、そうだよな~・・・自分でも思うわ。 」


自分が言った言葉にも、アイツが返した言葉にも、その他の社員もなのかはどうか・・・

普段タイプして変換ばかりの生活に、漢字の手書きが出来るコイツ。まぁ当たり前なのかどうかは良く分らないけれど、学生生活から英語だけだった俺にしたら、漢字の変換はできるけれど、書け。と言われたら出来ない・・・。
その漢字の手書きに、コイツは日本で生活していたんだな・・・っと・・・ある種、女のコの扱いの上手いコイツは、イタリアにでも行ってたんじゃないかと錯覚しそうだった事は、頭の中で・・・

上手くグレーにぼやけた。


その紙をもって会議室のドアに行き、オフィスの中に顔を出して・・・


「 ごめーん。誰かぁ~、テープちょうだいっ。 」


片手を差し出してスーパースマイルに、最後は首を傾げてオマケ付き。
はいっ!っと言った声が何人も聞こえたけれど、直ぐ一番近い子がぴゃっと両手で差し出して、手に持たせたままテープを ぴぃーーっプチ、と取る。


「 ふふ。 ・・・ありがと。 」 


背の低いその子の顔を覗き込んで微笑み、テープを持っている手を片手で上から包んでいた。

手の甲に今取ったばかりの長めのセロテープ。
包んだその彼女の手にテープが絡んで、手を離そうとしたら くっ付いていた。


「 ごめん・・・離れられなくなっちゃった。 」


顔を耳元に寄せ そんな事を言っているけれど、コイツが反対の手に持って背中に回した張り紙・・・
その文字・・・


“ 至上命令・接触厳禁 (コーヒーもお茶も要らないよ。) ”


まぁ、カッコ内の意味を言いたいのだろうな・・・。とは思うものの、接触の意味が違って見えた。

そんな事は昔から・・・。

今さら驚く事も無い、ずーっと変わらない同僚のコイツ。
コイツの手から紙を取り上げて、違う子がさっと俺に差し出してくれたテープをピッっと引っ張って・・・

ゆっくり瞬きをした・・・目を開けたらその瞳を見詰めて・・・


「 いつも・・・ROGER & GALLET ? 」


_____ そうですね・・・パリにいた頃から・・・・


「 へ~、そうなんだ。俺もLour l’ Homme・・・持ってる。 」


ふふっ、このムスクなんだけど、棘トゲしてない香りがいいよね。特に女の子のは甘くて柔らかいムスクかな~・・・そんな会話をしていながら その子の手にもったセロテープを、ぴっ、ぴっ、ぴっ、と3回取っていると、その子が・・・


_____ 今日は、何を着けて・・・いらっしゃるんですか・・・


そう目を瞑って少し胸に寄る様に顔を近づけてきたので、顔をその耳元に寄せて囁いた。


「 じゃぁね・・・秘密だけど・・・

 当てたら・・・いい事。 

  ・・・あるかもよ・・・」


間近でもう一度目を見て、ウインクした。
けれど手は、セロテープを持っていてくれた手を彼女の方に押していた。


「 くすっ。・・・どうもありがとう。 」


微笑みながらも言いながらも、横の同僚の腕を引っ張った。
そのまま会議室にコイツを引っ張って行き、ドアの外にその紙をぺちっと貼ると、横のコイツが


「 用事のあるヤツ。 俺かコイツの携帯に電話して。 」


親指で自分と俺を指して そう言い残し、何にも要らないから入らないでね~。とも言い残したら・・・そのコイツの笑顔と甘える様な声にオフィスの子達が、ボッと成る子も溶けそうな子も赤く成る子も居たのを確認すると、ウインクしながらドアを閉めた。


「 オイ、お前・・なんだよ、ロジェ・ガレ。 」


・・・溶けそうな甘えた声と打って変わって、いきなりいつも自分と会話する声に成って言った。


「 あぁ、ロジェ・ガレの香りの子って・・・さ・・・」


コソコソっと、手に巻きついたテープを剥がしている同僚の耳に耳打ちしたら、
ん~そうだな・・・。今までで気にした事ねぇ~・・・。と、言いつつ・・・


「 俺とお前。 似てる様で似てないんだな。 」


そう言ってパシっと俺の背中を叩いた。 ・・・ので、聞く。


「 背中に、今の丸めたテープ。付けただろ? 」


あっ、ばれた~。やっぱ似てるんだろな~俺達。って言いながら自分の席に着いているコイツ。


「 なっ。考える事だけは・・・かな? 」


テーブルに肘を付いて俺にそう言うコイツは、今日はテーブルの向かい側に座っていた。
背中に手を回して張られたセロテープを取ると・・・・

会議室で男5人。窓を背にした部長用の席が開いたまま、ホワイトボードの傍に座っている俺達。部長が来るまでの間、モデル起用の為の新しく組まれたこの、男だけのチームにて。

フェラガモの彼は、俺達2人と反対の好みがあるとは、前もって知っていたので、新しく同僚のコイツが選び、密かに進めてくれていた2人のセンスを見る為に・・・

さっき、レイアウト・サンプルが出来たと持って来てくれた封筒を開けて、幾つかの束に纏められているものをテーブルに並べていった。


束にされているものの、一番上のページはどれも画像が付いている。

どれをとっても記事内容と写真は同じでもレイアウトされたのは、同じものも無ければ、似た様なものも無い。


「 じゃぁ・・・いい? 」


テーブルに肘を着いて身を乗り出してそう言うと、向かい側の同僚は俺が何をしたいのか分かっている様だった。


「 とりあえずの、パッと見。 どれがいいと思ったか? ・・・だろ? 」


「 せーの。で、自分が好いと思ったものに手を乗せて・・・
  Ready . . . ? はい。せーの・・・」



________ パシッ


それぞれが手を乗せたサンプル。


色とりどりのサンプル表紙。宝石箱のような貰ったクッキーを思い返す。

・・・なので、コイツが選ぶんじゃないかと思っていたものにも、検討は付いていた。


「 おっ! 俺とお前・・・一緒・・・」


驚いた表情の同僚を見て、ふっっと一瞬鼻から笑うけれど、にこっと微笑んでもみる。


「 やっぱり・・・」


自分の手の甲に違和感を感じた同僚。

皆バラバラ・・・
モデル起用の選考も各自好みのタイプの女の子が違う様で、とてもいいチーム編成には、この・・・

自分の部下達の事を良く見て知ろうとして、些細な事でも気付いているコイツの今までの上司としての姿勢。

(・・・すごいかも。)

思わず思ってしまったけれど、重ねた同僚の手をゆっくり離した。


コイツに仕返しとして、手の甲に背中に付けられた丸めたテープを付けたけれど、その反対の手。

自分がいいと思ったものに乗せていた。


「・・・一緒じゃ・・ねぇな。 」


それに気付いていたのは、同僚のコイツだけだった。
その部分がきっと彼の上司として抜擢された理由、彼の才能なのだろうと思えている。


手の甲にテープを付けられて、しかも自分と同じ・・・だと思って俺に、ふっと鼻から息を漏らした同僚。

ちらっと確認していたのは、もちろん俺が反対の手を乗せたサンプルの方。


「 だよな~。 」


女性の好みが違うのは、俺達はお互いに知っていること。

自分がスマフォを反対の手で裏返していたのを、見てたのか?と小声で聞いて来た。


「 まぁね。考え方自体は・・・似てるだろ?」


んだな。と言いながらも、よっしゃ、OKさすが、俺! と、人選の目に狂いは無かったと喜びつつガッツポーズをした。

皆が見えるその手に・・・

付いた・・・もともと自分が丸めたテープを剥がしながら。


「 お前・・・接触厳禁だって張り紙。見てたよな? 」


キーっと成って剥がしているそのテープ。

さっき違う子から自分がテープを貰った時、少し余計に貰ったテープでペッタリ手の甲に丸めたテープをくっ付けてやっていた。

痛ったー・・・と言いながら自分の手の甲のテープを剥がしているコイツを見て、笑った・・・

笑いながら口元に当てた手から、テープを持ったその子の手を押し返した時に付いたのだろう。
その子が、手首にきっとほんのり着けていた香水。

ロジェ・ガレの香りがして・・・

思わず目を瞑り、微笑みながら息を吸っていた。




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Love Letter from RT and CH

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